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ダイズの健康機能成分ダイゼインの生成の謎を解く

【概要】

東北大学大学院工学研究科の中山 亨 教授ら(バイオ工学専攻応用生命化学講座)は,東京大学大学院医学系研究科(河合 洋介 助教)との共同研究により,ダイズの健康機能成分として知られるイソフラボン(注1)の一種ダイゼインの生成にまつわる長年の謎を解き明かしました。この研究は,ダイゼイン生成の鍵酵素であるカルコン還元酵素の特定のアイソザイム(注2)が,ダイズ細胞内で代謝的に関連の深い他の酵素と複合体(メタボロン(注3))を形成することを見いだし,ダイズの根や種子におけるダイゼインの高効率な生成もこれで説明できることを示したものです。メタボロン形成の機能的重要性を明確に示したことにより,本研究の成果は代謝工学(注4)の進展にも大きく貢献するものとして注目されます。この共同研究の成果は8月14日付の専門誌「ザ プラント ジャーナル」(電子版)に掲載されました。

【用語解説】

注1 イソフラボン
ダイズなどのマメ科植物に特徴的に含まれ,図1で示したような構造をもつ有用成分の総称。ダイズにおもに含まれるイソフラボンはダイゼインとゲニステインである。

注2 アイソザイム
酵素としての活性がほぼ同じでありながら,その他の性質などが異なっていて分子としては別種である場合,そのような酵素をアイソザイムという。

注3 メタボロン
生命現象は,生体内でおびただしい数の化学反応が起こることによって成り立っている。これらの化学反応はほとんどの場合,ある反応の生成物が次の反応の基質になり,その反応生成物がその次の反応の基質になるというように,連続した反応経路を形成している。こうした生体内の反応経路のことを代謝または代謝経路と呼ぶ。代謝経路を構成する反応の一つ一つはそれぞれ,反応加速作用をもつ「酵素」というタンパク質のはたらきによって円滑に進行し,反応が異なれば担当する酵素も異なる。40年ほど前から,代謝経路を構成する酵素群は細胞内ではお互いにゆるく結合しながら複合体を形成しているのではないかと推定されてきた。この酵素複合体のことをメタボロンという。メタボロンを形成することにより,例えば不安定な代謝中間体を速やかに次の酵素に受け渡せたり,有毒な代謝中間体を細胞内に拡散させることなく即座に次の酵素反応に提供することができたりするなど,代謝を進める上で様々な利点があると考えられている。しかしながら多くの場合,メタボロン形成のもととなる結合力は弱く可逆的であり,検出の困難さもあってメタボロンの存在の実証には至らなかった。

注4 代謝工学
遺伝子組換え技術などを用いて,生物の細胞内に代謝経路を人為的に改変または構築し,特定の代謝産物を量産化したり生産を制御したりすることを目的とする学問。

図1.ダイズとそのイソフラボン(ダイゼインとゲニステイン)

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

東北大学大学院工学研究科 バイオ工学専攻
担当 中山 亨
電話, FAX:022-795-7270
E-mail:nakayama*seika.che.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学大学院工学研究科 情報広報室
担当 馬場 博子
電話: 022-795-5898
E-mail: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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