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皮膚内の微小血管を非侵襲で可視化 -光超音波と超音波を同時に計測が可能に-

【ポイント】

  • 皮膚のすぐ下にある微小血管の広がり方を画像化し、非侵襲で酸素飽和度の分布を可視化
  • 皮膚のシミやしわなどの老化の程度が分かることで、美容領域への応用が可能
  • 2波長光源と超音波送受信を制御し、準リアルタイムのイメージングを実現

【概要】

内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の1つである「イノベーティブな可視化技術による新成長産業の創出」(プログラム・マネージャー:八木 隆行)の一環として、東北大学教授:西條 芳文および株式会社アドバンテスト:増田 則之氏らの研究開発グループは、2波長の光超音波画像と超音波画像を同時に撮影できる、皮膚の「in vivoイメージング技術注1)」の開発に成功しました。

光超音波イメージング法注2)は、生体に光を照射し、光のエネルギーを選択的に吸収した血液などから発生した超音波を測定することで、生体内部を画像化する手法です。従来の技術では困難な、皮膚内の微小血管の測定に適した新たな非侵襲イメージング手法として注目されています。

しかし、光超音波のみを使用するイメージング法では、皮膚内にある直径数十μm以下の微小血管を画像化しても、得られた血管像が皮膚内各層のどの領域にあるのか確認することができませんでした。また、複数波長の光源を用いることで血管の酸素飽和度注3)も計測可能ですが、生体の動きで測定結果に影響するため、その利用は動物実験などの研究用途にとどまっていました。

今回、開発に成功した皮膚のin vivo イメージング技術は、超音波を集束して検出する超音波センサを用いることで光超音波と超音波を同一センサで計測し、2つの波長を交互に照射することで発生する超音波を検出して生体浅部の微小血管網と血中酸素飽和度のイメージングが可能となりました(図1)。約4 分間で深度2mm、6mm角範囲の画像データを取得できます。また、取得したデータを用いて、酸素飽和度のマッピング、光超音波画像と超音波画像を重ね合わせることも可能です。

生検した皮膚の研究から、皮膚のシミやシワなどの皮膚老化が微小血管に関係していることが知られています。開発した光超音波イメージングにより、非侵襲で皮膚の光老化といった身体機能低下のモニタリングなどに応用することが期待されます。

図1 前腕皮膚の測定例。血管の色が青いほど酸素飽和度が低く、赤いほど高い。

【用語解説】

(注1)in vivoイメージング:生体を測定し画像化することです。

(注2)光超音波イメージング法:吸収体にレーザ光を照射し、光を吸収した吸収体が熱膨張して発生する超音波(光音響効果)を検出、イメージングする手法です(右図)。

(注3)酸素飽和度:血中の総ヘモグロビンのうち、酸素と結合したヘモグロビンが占めている割合(%)を指します。光超音波イメージングでは、2つの波長で得た音圧から、酸化ヘモグロビン濃度と還元ヘモグロビン濃度を計算し、酸素飽和度を算出します。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

<研究に関すること>
東北大学 大学院医工学研究科 教授 西條 芳文
Tel:022-795-7148  Fax:022-795-7149

<報道担当>
東北大学 大学院医工学研究科 総務係
Tel:022-795-7491

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