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鳥が歌を子孫に伝える脳メカニズムの発見 文化伝承を支えるドーパミン

【発表のポイント】

  • 歌をさえずる鳥の一種キンカチョウ*1が、世代を超えて正確に歌を伝承できる脳メカニズムを調べました。
  • 成鳥の成熟した歌を聞いたとき、幼いキンカチョウの脳では、歌うために必要な部位でドーパミン*2が放出されていました。
  • ドーパミンは、歌うために必要な脳部位に成鳥の歌の情報を記録して、幼いキンカチョウによる歌の模倣を可能にしていました。
  • 本研究の成果は、技術や文化の発展に寄与した人類の高い模倣能力の起源を理解する上で、有益な情報となる可能性があります。

【概要】

東北大学大学院生命科学研究科の田中雅史助教は、アメリカのデューク大学のリチャード・ムーニー教授と、中国の北京大学の李毓龙教授の研究グループとの共同研究を行い、歌をさえずる鳥の一種キンカチョウの脳の中で、歌の模倣に必要な神経回路を発見しました。その神経は、脳の深部の中脳と呼ばれる部位から、歌う行動を司る脳部位まで突起を伸ばし、先生となる成熟した鳥の歌に反応して、ドーパミンを放出することが分かりました。さらに、このドーパミンの働きを妨げると、キンカチョウは先生の歌を模倣しなくなることが明らかになりました。本研究の結果は、模倣学習を発動する神経回路を初めて明らかにするもので、技術や文化の伝承のみならず、言語などの社会的コミュニケーションにも重要な役割を果たしている模倣行動の起源を理解する上で重要な発見です。本研究の内容は、10月17日18時(日本時間18日午前2時)にNature誌(電子版)で発表された後、11月1日発行のNature誌に掲載される予定です。本研究は、日本学術振興会の海外特別研究員制度、米国NIH、米国NSF、米国BRAIN Initiative、中国973 Programの支援を受けて行われました。

「模倣能力」人は模倣能力をもつことで、次の世代へ言語などの知識を正確に伝えることができる。こうした優れた模倣能力は動物界では珍しいが、キンカチョウなどの歌をさえずる鳥は、模倣を通して歌を学習し、次の世代へ歌の伝承を行うことができる。

【用語説明】

*1 キンカチョウ:学名はTaeniopygia guttata。スズメ亜目カエデチョウ科に属する、オーストラリア周辺が原産の鳥で、神経科学の研究によく用いられる。

*2 ドーパミン:快楽や運動など様々な脳機能に関与することが知られる、神経間の情報伝達を担う分子。本研究によって、模倣の発動という新機能が明らかになった。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
担当 田中 雅史(たなか まさし)
電話番号:022-217-6229
Eメール:masashi.tanaka.a1*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか (たかはし さやか)
電話番号:022-217-6193
Eメール:lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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