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「電力・水素複合エネルギー貯蔵システム」で72時間(3日間)の連続運転に成功 ―不規則な電力変動に対して高品質な電力を長時間安定供給―

NEDO事業において、東北大学と前川製作所は、仙台市茂庭浄水場に構築した電力貯蔵システムと水素貯蔵システムを組み合わせた「電力・水素複合エネルギー貯蔵システム」による実証の結果、大規模自然災害による長期停電を想定した72時間(3日間)の連続運転に成功しました。これにより、太陽光発電出力や負荷消費電力の不規則な変動に対しても、高品質な電力を長時間安定供給できることを実証しました。

電力・水素複合エネルギー貯蔵システムは、化石燃料が不要で、非常時でも高品質な電力を長時間安定して供給することができます。CO2フリーの新たな非常用電源として、浄水場をはじめ、各自治体の大規模自然災害発生時の避難場所などへの導入が期待されます。

【概要】

2011年3月の東北地方太平洋沖地震では、停電が約4日間継続し、宮城県内の石油備蓄基地の被害や物流の遮断により燃料確保が困難となり、仙台市の主要な浄水場では機能維持に大きな労力を費やしました。これらの浄水場では、非常用電源として、主に軽油や灯油を用いた自家発電機を使用していますが、大規模自然災害発生時は、輸送を伴う燃料確保が困難となるため、大容量のエネルギーを確保するには、あらかじめ大容量の燃料タンクに燃料を備蓄しておく必要があります。しかし、非常用電源用の自家発電機は、通常時には使用しないため、タンク内の燃料が経年変化し、非常時の動作不良につながりやすくなります。このため、定期的に燃料を交換する必要がありますが、燃料タンクが大容量になると、燃料入れ替え時期の判断、燃料入れ替えのための燃料消費、燃料の再充填などが課題になります。また、今後の化石燃料の高騰や枯渇、CO2排出量削減を考えると、化石燃料に依存しない大容量非常用電源を早期に確立する必要があります。

一方、非常時だけでなく、通常時でも化石燃料に替えて再生可能エネルギーを有効活用できるようにするには、刻々と変化する発電出力や負荷消費電力を正確に把握・制御する必要があり、これには、即応性、大容量性、耐久性を兼ね備えたエネルギー貯蔵装置が不可欠となります。しかし、これらすべての要求に応えられる単一のエネルギー貯蔵装置は存在しないため、上記すべてを満たすには、複数のエネルギー貯蔵装置を組み合わせる必要があります。

このような背景のもと、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業※1において、国立大学法人東北大学と株式会社前川製作所は、共同実施先である日本ケミコン株式会社、株式会社神鋼環境ソリューション、北芝電機株式会社とともに電力貯蔵システムと水素貯蔵システムを組み合わせて、通常時の再生可能エネルギーの有効利用と非常用電源としての機能を併せ持つ「電力・水素複合エネルギー貯蔵システム」を考案・開発しました。そして、大規模自然災害発生時の長期停電に対する高品質・高安定な電力供給を可能にする大容量非常用電源であることや、非常時や通常時の高精度な変動補償による再生可能エネルギーの活用に有効であることを実証するために、仙台市茂庭浄水場に20kWの実証システムを構築し、2017年8月より大規模自然災害による長期停電を想定した連続運転を実施してきました。

今般、実証の結果、大規模自然災害による長期停電を想定した72時間(3日間)連続運転に成功し、太陽光発電出力や負荷消費電力の不規則な変動に対しても、高品質な電力を長時間安定供給できることを実証しました。

図1 「電力・水素複合エネルギー貯蔵システム」の基本構成

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問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
国立大学法人東北大学 大学院工学研究科 担当:津田 TEL:022-795-5020
E-mail:tsuda*ecei.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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