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反強磁性金属ヘテロ構造における磁気抵抗効果を室温で観測

 東北大学のSamik DuttaGupta助教、伊藤隆一氏(博士前期課程学生)、深見俊輔准教授、大野英男教授(現、同大学総長)らは、反強磁性金属ヘテロ構造における磁気抵抗効果の観測に成功しました。当成果は、2018年11月15日(米国時間)に米国物理学協会(American Institute of Physics:AIP)の出版事業を取り扱うAIP Publishing LLC社が発刊する「Applied Physics Letters」にてオンラインで公開され、同日AIP Publishingによる特集記事(Scilight)が発表されました。

 電子の持つ電気的性質と磁気的性質の同時利用に立脚するスピントロニクスにおいては、磁性体の磁気的な状態の電気的な検出がカギとなります。これまでのスピントロニクス分野では主に強磁性体が主要な研究対象でしたが、近年これに加えて、原子スケールでは磁気的な秩序を有するもののマクロには磁化を持たない反強磁性体の可能性が注目されています。反強磁性体は上述のような性質から、高集積時の隣接素子間の相互作用の抑制や、外乱磁界に対する耐性において、強磁性体にはない特長が期待できる一方で、磁気秩序を電気的に検出することは強磁性体と比べて格段に難しくなります。

 今回、当研究グループはSi基板上に堆積された反強磁性/非磁性金属ヘテロ構造において、反強磁性金属の磁気的な状態に依存して電気抵抗が変化する現象(磁気抵抗効果)を室温で観測することに成功しました(右図)。用いた積層構造は反強磁性PtMn(白金マンガン合金)と非磁性のPt(白金)またはW(タングステン)からなります。様々な試料を用いて系統的に調べた結果、当磁気抵抗効果は主にPtまたはWがスピン・軌道相互作用を介して生成する膜厚方向へのスピンの流れ(スピン流)がPtMnの磁気モーメントにトルクを及ぼし、その反作用が電気抵抗に現れることで生ずる「スピンホール磁気抵抗効果」に由来していることが明らかになりました。

 今回用いた基板や材料はいずれも容易に産業利用できるものであり、本研究によってスピントロニクスにおける反強磁性体利用の流れが加速することが期待されます。

<特集記事情報>
"Scilight: Room-temperature magnetoresistance achieved in a metallic antiferromagnetic material"
(反強磁性金属における室温での磁気抵抗効果)
https://aip.scitation.org/doi/10.1063/1.5081049

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

深見俊輔(フカミ シュンスケ)
東北大学 電気通信研究所
Tel:022-217-5555, Fax: 022-217-5555
E-mail:s-fukami*riec.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

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