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脳の血管障害を血流の拍動から予測する‐頚動脈血流の波形分析に基づく認知症の予防へ‐

【発表のポイント】

  • 認知症や脳梗塞の危険因子である大脳白質病変と頸動脈血流拍動増大の関連を発見。
  • 超音波を用いた頸動脈血流の波形分析に基づく非侵襲的な手法による解明。
  • 動脈血流を指標とした新たな認知症予防の可能性を示唆した。

【研究概要】

宮城教育大学保健管理センターの橋本潤一郎(はしもと じゅんいちろう)教授と、東北大学大学院医学系研究科腎・高血圧・内分泌学分野の伊藤貞嘉(いとう さだよし)教授の研究グループは、VU大学医学センター(アムステルダム)のBerend E. Westerhof博士と共同で、脳MRIで検出される白質病変を引き起こす新たな機序を解明しました。

大脳白質病変は、認知障害や脳梗塞の危険因子であることが知られています。橋本教授らの研究グループは、高血圧患者の頸動脈血流波形を超音波で調べ、収縮後期の血流拍動が増大するほど白質病変が増加することを発見しました。今回用いた血流増大係数(Flow augmentation index)注1は、従来の血圧増大係数(Pressure augmentation index)注2よりも正確かつ早期に白質病変や血管老化を予測し、脳疾患の早期予防への応用が期待されます。

 大脳の微小血管障害の現れである白質病変は、その多くが加齢や動脈硬化に伴って発症しますが、その原因は明らかではありませんでした。研究グループは今回、大動脈硬化や血圧反射波注3の増大に伴って頸動脈血流の収縮後期拍動が増加すると、脳微小血管内で血流拍動が増加して血管が傷害され、白質病変が出現することを明らかにしました。

本研究成果は、2018年10月25日付で米国心臓協会(American Heart Association, AHA)の学会誌であるArteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology誌の電子版に掲載されました。本研究は、文部科学省科学研究費補助金の支援を受けて行われました。

【用語説明】

注1. 血流増大係数:収縮後期に流出(流入)する血液量を、収縮初期に流出(流入)する血液量に対する比として表す指標。収縮初期血流に収縮後期血流が追加されるという観点から、augmentation(増大)と呼ばれる。収縮初期ピーク流速と拡張末期流速の差(V1h)、および血流波形の収縮後期ピーク流速と拡張末期流速の差(V2h)から、Flow augmentation index (FAIx) = V2h/V1h (%)として求める。

注2. 血圧増大係数:収縮初期の駆出圧に加わる収縮後期の血圧成分(増大圧augmented pressure)を定量化した指標。増大圧は一般に、下半身で発生した反射波に由来し、Pressure augmentation index (PIx)は反射波の程度を表す指標として用いられる。収縮初期ピーク血圧(P1)と収縮後期ピーク血圧(P2)の差(AP)、および脈圧(PP)から、PAIx = AP/PP (%)として求める。

注3. 血圧反射波:血圧の波形は、心臓からの血液駆出による順行性の駆出波(投射波)と、末梢の血管で反射して心臓方向へ戻る逆行性の反射波が、相互に重なり合って形成される。血圧の反射波は、血圧とともに血流に対して大きな影響を及ぼすことが知られている。

図1.白質病変は認知機能障害や脳血管障害の危険因子である

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問い合わせ先

(研究に関すること)
国立大学法人 宮城教育大学 保健管理センター
教授 橋本 潤一郎(はしもと じゅんいちろう)
電話番号: 022-214-3343
Eメール: hashimoto*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(取材に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
電話番号: 022-717-7891
FAX番号: 022-717-8187
Eメール:  pr-office*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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