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切除可能膵がんの新たな標準治療として 術前化学療法の有効性を証明 ーがんのなかでも最も治療成績が不良な膵がんの治療成績が向上ー

【発表のポイント】

  • 現在、切除可能膵がんに対する標準治療は、まず手術を行った後に抗がん剤を半年間投与するものであるが、治療成績の向上が強く望まれている。
  • 今回、切除可能膵がんに対して、術前治療の効果を見るためのランダム化比較試験注1を企画
  • 実施したところ、術前化学療法を行った群は手術先行群と比較して治療成績が良好であることが、世界で初めて明らかになった。
  • 今回の結果は切除可能膵がんの標準治療を大きく転換するものであり、膵がんの治療成績の向上が期待できる。

【概要】

東北大学病院総合外科科長の海野倫明(うんの みちあき) 教授が代表を務める膵癌術前治療研究会注2は、切除可能膵がんであっても、すぐに切除手術を行うより、術前化学療法を行った後に手術をする方が良好な治療成績が得られることを、世界で初めて明らかにしました。

本研究成果は、2019年1月18日にサンフランシスコにおいて開催されたASCO-GI(米国臨床腫瘍学会-消化器がんシンポジウム)において口頭発表されました。また、本研究は平成24年度厚生労働省科研費補助金の医療技術実用化総合研究事業「切除可能膵癌の術前化学療法の有効性・安全性に関する臨床試験」の支援を受けて行われました。

膵がんは、あらゆるがんの中で最も治療成績が不良な「最凶のがん」と呼ばれています。がんをすべて取り切る手術(治癒切除)を行うことが、長期生存をもたらす唯一の方法ですが、その治療成績はいまだ満足すべきものではなく、成績向上が急務と考えられています。現在、切除可能膵がんに対する標準治療は、まず切除を行い(手術先行)、術後に抗がん剤を半年間投与する、というものです。今回、切除可能膵がんに対する術前治療の有効性を評価することを目的に、ランダム化比較試験を企画・実施し、術前化学療法を行った群は手術先行群と比較して治療成績が良好であることを明らかにしました。

【用語説明】

注1. ランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT):
研究の対象者をランダムに2つのグループに分け、一つには今回評価する新しい治療法を(試験群)、もう一つのグループには従来まで行われてきた治療法を(対照群)行う。その後、生存率、生存期間、有害事象などを評価し、新しい治療法の有益性を証明しようとする疫学研究の手法で、偏り(バイアス)が少なく、根拠の質が高い研究手法とされている。

注2. 膵癌術前治療研究会:
膵がんに対する術前治療のエビデンスの創出を目的とし、2010年に設立された研究会。全国57の医療機関の膵がん治療を行っている医師が集まり、意見交換をしながら多施設共同臨床研究を行っている。東北大学の海野倫明教授が代表世話人を務め、事務局は東北大学病院 総合外科に設置されている。多くの膵がん術前治療の臨床研究を行い、年に1回の総会を開催している。
URL:http://www.surg.med.tohoku.ac.jp/society/

図1. 試験のデザイン

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学病院 総合外科
科長 海野倫明
電話 022-717-7201
E-mail m_unno*surg.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学病院 広報室
電話 022-717-7149
E-mail pr*hosp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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