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日本人集団の2型糖尿病に関わる新たな遺伝子領域を発見

【発表のポイント】

  • 20万人規模の日本人集団の遺伝情報を用いたゲノムワイド関連解析を行い、糖尿病治療薬の標的分子であるGLP-1受容体のミスセンス変異など、2型糖尿病の危険性を高める遺伝的変異を新たに同定しました。
  • 2型糖尿病の遺伝において、日本人集団と欧米人集団に共通する、または相違がある分子生物学的パスウェイを明らかにしました。
  • 本研究成果は2型糖尿病の遺伝要因の理解を深めるとともに、将来的には糖尿病の発症予測・発症前予防の応用につながることが期待されます。

【概要】

2型糖尿病は脳卒中・心筋梗塞・腎不全・がんなど、万病の危険性を高める重大な病気であり、日本国内で1,000万人、世界中で4億人以上が2型糖尿病と言われています。2型糖尿病のかかりやすさは、遺伝と環境の両方によって影響されますが、日本人集団における2型糖尿病の遺伝の理解は不十分でした。

東京大学大学院医学系研究科の門脇 孝特任教授、山内敏正教授、理化学研究所 生命医科学研究センターの堀越桃子チームリーダー、鎌谷洋一郎チームリーダー、大阪大学大学院医学系研究科 岡田随象教授、鈴木 顕助教らの研究グループは、20万人規模の日本人集団の遺伝情報を用いた大規模ゲノムワイド関連解析(GWAS、注1)を行い、2型糖尿病の危険性を高める遺伝子領域を新たに28箇所同定しました。また、2型糖尿病治療薬の標的分子であるGLP-1受容体のミスセンス変異(注2)が2型糖尿病の危険性と関わることを見出しました。このミスセンス変異は薬剤投与後のインスリン分泌を増加させるため、薬の効き方を予測する指標に応用できる可能性があります。

2型糖尿病の遺伝において、膵臓のβ細胞(注3)が日本人集団と欧米人集団に共通して重要である一方、インスリン分泌を調節する経路など日本人集団においてより大きな影響を有する分子生物学的パスウェイを見出しました。

 これらの結果は2型糖尿病の遺伝要因の理解を深めるとともに、将来的には糖尿病の発症予測・発症前予防に応用できる可能性があります。

本研究は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)のゲノム医療実現推進プラットフォーム事業「先端ゲノム研究開発」(GRIFIN)領域における研究開発課題「糖尿病の遺伝・環境因子の包括的解析から日本発次世代型精密医療を実現するプロジェクト」(研究開発代表者:門脇 孝)、「オーダーメイド医療実現化プロジェクト」の「糖尿病・メタボリックシンドローム関連疾患の個別化医療実現」(研究開発代表者:門脇 孝)の一環で行われました。その成果は日本時間2019年2月5日午前1時(米国東部標準時 2019年2月4日午前11時)に米国科学雑誌 Nature Genetics オンライン版に掲載されました。

図1 本研究で実施した日本人集団の2型糖尿病GWASのマンハッタンプロット
本研究に参加した20万人規模の日本人集団の遺伝情報を用いて実施した2型糖尿病GWASの結果。図では、横軸は染色体上の位置を表し、縦軸は変異の関連の強さを表している。GWASの有意水準を超えた領域は、青色と緑色で色付けされており、青色は過去の研究で報告された領域、緑色は本研究で初めて有意な関連が観察された領域である。

(注1)ゲノムワイド関連解析(Genome-wide association study; GWAS)
糖尿病などの疾患や体重などの量的な形質に影響があるゲノム上の変異を、網羅的に検索する手法。2002年に、理化学研究所が世界に先駆けて報告を行っており、以降、さまざまな疾患や量的形質に関連する感受性遺伝子領域の同定に貢献している。

(注2)ミスセンス変異
タンパク質を構成するアミノ酸が別のアミノ酸に変化するような変異。

(注3)β細胞
膵臓の内分泌腺に存在し、血糖値を下げるホルモンであるインスリンを分泌する細胞。

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問い合わせ先

東北大学東北メディカル・メガバンク機構 広報戦略室
室長 長神 風二(ながみ ふうじ)
電話番号:022-717-7908
Eメール:pr*megabank.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

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