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カーボンナノチューブに勝る高耐久のキャパシタ電極カーボンを開発

【研究成果のポイント】

  • 細孔壁の大部分が単層グラフェンから成るメソ多孔体「グラフェンメソスポンジ」をシームレスなシート電極に成型し、電気二重層キャパシタの電極に利用しました。
  • 高温耐性や高電圧耐性において、従来最も優れた材料であった単層カーボンナノチューブを上回りました。
  • 一般的な有機系電解液を用い、室温にて4.4 Vでも安定に動作する対称キャパシタの構築が可能となりました。
  • 従来は2.7~2.8 Vが限界であったキャパシタ単セルの上限電圧を大幅に増加できることから、高電圧キャパシタモジュールの小型化が可能になります。

【概要】

東北大学多元物質科学研究所の野村啓太(大学院生)、西原洋知准教授及び京谷 隆教授、TOCキャパシタ株式会社の小林直哉博士らの研究グループは、細孔壁注1)が高品質のグラフェン注2)から成るメソ多孔体注3)「グラフェンメソスポンジ注4)」をシームレスなシート電極に成型し、これを用いた高耐久の電気二重層キャパシタ注5)を開発しました。現在の電気二重層キャパシタは活性炭注6)を電極材料に利用していますが、高電圧をかけると活性炭が劣化するため単セルの上限電圧は2.7~2.8 Vに制限されていました。このため、数百Vの出力を得るには100個以上の単セルを直列に接続しなければならず、モジュールが大型化するため用途が制限されていました。今回開発した材料を用いた電気二重層キャパシタは、60 °Cの高温で3.5 Vの高電圧を700時間以上に渡って印加しても全く劣化しませんでした。さらに、室温で最大4.4 Vまで電圧を上昇できました。従来の高耐久性材料は単層カーボンナノチューブ注7)でしたが、今回の材料は高温耐性・高電圧耐性でこれを上回りました。さらに、単層カーボンナノチューブよりも製造コストが低く抑えられる利点もあります。単セルの電圧を増加させることで高電圧キャパシタモジュールの小型化が可能になるため、電気二重層キャパシタの用途範囲が大幅に広がることが期待できます。

本成果は、2019年2月6日10時(英国時間)にEnergy & Environmental Science誌にてオンライン公開されました。

GMSシートの作製手順

【用語解説】

注1) 細孔壁
「細孔」とは材料の内部に存在する微小な穴(孔)のこと。細孔壁とは、細孔を取り囲む固体部分の名称。

注2) グラフェン
黒鉛を構成する炭素六角網面の1枚のシートのことを指す。カーボンブラックや活性炭など低結晶性もしくは非晶質のカーボン材料も、基本的にはグラフェンにより構成されている。

注3) メソ多孔体
細孔はその大きさによって、ミクロ孔(2 nm以下)、メソ孔(2~50 nm)、マクロ孔(50 nm以上)に分類される。メソ孔を大量に含有する多孔体のことをメソ多孔体と呼ぶ。

注4) グラフェンメソスポンジ(GMS)
当研究室で開発した新規カーボン材料。高品質の単層グラフェンが泡状に集合した構造であり、高比表面積、高導電率、高耐食性に加え、機械的強度が強くなおかつ柔軟に変形できるなどユニークな特徴を持つ。詳しくは下記の論文を参照。
Adv. Funct. Mater., 26, 6418 (2016).

注5) 電気二重層キャパシタ(EDLC)
電気二重層キャパシタは、アルミ電解コンデンサとリチウムイオン電池の中間的なエネルギー密度と出力密度をもつ蓄電デバイスである。英語名はElectric double-layer capacitorで、頭文字を取ってEDLC と略記される。リチウムイオン電池は電極材料の酸化還元反応によって充放電するが、電気二重層キャパシタは電解液と電極材料との界面に形成される電気二重層によって充放電する。電極材料には比表面積が大きく導電性をもつ活性炭が使用されている。

注6) 活性炭
2 nm以下の小さい細孔を大量に含む炭素質の物質。現在市販されているEDLCは活性炭を電極材料に使用している。

注7) 単層カーボンナノチューブ
1枚のグラフェンが筒状に丸まって形成されるチューブ状の物質。比表面積が約1200 m2/gと大きく、なおかつエッジの量が活性炭より少ないため、高容量と高電圧を両立できる材料として、従来は最良のEDLC電極材料として知られていた。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究関連)
東北大学多元物質科学研究所
  教授 京谷 隆(きょうたに たかし)
電話:022-217-5625
E-mail:kyotani*tagen.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

東北大学多元物質科学研究所
  准教授 西原 洋知(にしはら ひろとも)
電話:022-217-5627
E-mail: nishihara*tagen.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道関連)
東北大学多元物質科学研究所 広報情報室
電話:022-217-5198
E-mail:press.tagen@grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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