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悪性黒色腫の進行度を熱伝導率で判定 -皮膚がんの新たな検査機器としての開発が期待-

【発表のポイント】

  • ほくろのがんである悪性黒色腫は、進行すると命に関わる皮膚がんであり、早期発見、診断、治療が重要であるが、進行度の診断は専門医でも難しい場合がある。
  • 今回、悪性黒色腫の「表皮内がん」と「早期真皮浸潤がん」を外科的に切除することなく迅速に熱伝導率で判定することに成功し、検査機器の開発を進めている。
  • 機器が承認されれば、早期悪性黒色腫の治療において、不必要な検査を省くことができ、より早期に最適な手術を行うことが可能となることが期待される。
  • 数値により判断できるため、今後、開発が進めば、専門医のいない遠隔地の医療機関が、患者を専門病院に紹介するべきかの判定に役立つ。

【概要】

東北大学大学院医学系研究科皮膚科学分野の相場節也(あいば せつや)教授、東北大学病院皮膚科の藤村卓(ふじむら たく)講師、弘前大学大学院理工学研究科の岡部孝裕(おかべ たかひろ)助教、八戸工業高等専門学校の圓山重直(まるやま しげなお)校長らの研究グループは、皮膚がんの進行度を熱伝導率で判定することに成功しました。現在、検査機器としての開発を進めています。

悪性黒色腫は、本邦では、毎年600~700人の方が亡くなる、進行すると命に関わる皮膚がんです。血管やリンパ管を持たない皮膚の最外層である「表皮」から発症しますが、この表皮内がんの段階では転移しないため、転移の有無を調べるための全身の画像検査は行わなくても問題ありません。しかし、がん細胞が血管やリンパ管を豊富に持つ「真皮」に進行した早期真皮湿潤がんでは、リンパ節や他の臓器に転移する可能性があり(図1)、他の臓器に転移していないかをなるべく早期に検査する必要があります。そのため、がん細胞が真皮に進行しているかどうか判断することは重要です。現在は、手術前に、がんを外科的に切除する試験採取を行って真皮に進行しているかどうかを判断していますが、その診断が確定するのには2〜3週間の期間を要しています。また、皮膚がんの初診時診断は、主にダーモスコピー注1を用いた視診により行われますが、この診断は皮膚科専門医であっても、ときに苦慮することがあり、悪性腫瘍の発見が遅れ治療に影響を及ぼすことがあります。

今回、研究グループは、熱伝導率を用いた皮膚がんの検査機器を開発し、悪性黒色腫11例において、より早期かつ簡便に皮膚がんの進行度を判定することに成功しました。

本研究成果は、平成31年3月7日午前10時(グリニッジ標準時、日本時間3月7日午後19時)英国科学雑誌『Scientific Reports』電子版に掲載されました。

尚、本研究は日本医療研究開発機構(AMED)の橋渡し研究戦略的推進プログラム(シーズC)「非侵襲熱物性計測による皮膚腫瘍浸潤度測定法の開発」の支援を受けて行われました。

【用語説明】

注1. ダーモスコピー:
皮膚がんを診断するための偏光板付き拡大鏡

図1 悪性黒色腫の進行方向

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学病院皮膚科
東北大学大学院医学系研究科皮膚科学分野
藤村 卓(ふじむら たく)
神林 由美(かんばやし ゆみ)
電話番号:022-717-7271
Eメール:tfujimura1*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学病院広報室
電話番号:022-717-7149
Eメール:pr*hosp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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