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新規ヌーナン症候群モデルマウスの作製に成功 ‐治療法開発への応用に期待‐

【研究のポイント】

  • 国の指定難病であるヌーナン症候群注1の原因遺伝子であるRIT1注2の変異マウスを作製した。
  • RIT1変異マウスは成長障害、浮腫、心肥大などヌーナン症候群の症状を再現し、βアドレナリン受容体作動薬注3による心臓線維化(固くなること)が進行することを発見した。
  • 本研究の成果によりヌーナン症候群患者の低身長、リンパ管形成異常、心疾患の病態解明ならびに治療法開発が期待される。

【研究概要】

東北大学大学院医学系研究科遺伝医療学分野の井上 晋一(いのうえ しんいち)助教、高原 真吾(たかはら しんご)医師、青木 洋子(あおき ようこ)教授、同心臓血管外科学分野の齋木 佳克(さいき よしかつ)教授らの研究グループは、国の指定難病となっているヌーナン症候群の原因遺伝子RIT1の変異マウス作製に成功しました。ヌーナン症候群モデルマウスは成長障害、胎仔浮腫、心肥大などヌーナン症候群の症状を再現し、βアドレナリン受容体作動薬による心臓線維化亢進を示すことを発見しました。

ヌーナン症候群は、低身長、先天性心疾患、骨格異常、リンパ管形成異常を伴う先天性疾患で、2013年に同グループが、新しい原因遺伝子RIT1を世界に先駆けて報告しました。RIT1変異を持つヌーナン症候群患者では高頻度に心肥大やリンパ管形成異常を合併しますが、詳細なメカニズムはわかっていませんでした。

今回作製されたヌーナン症候群のモデルマウスは、ヌーナン症候群の心疾患、低身長、リンパ管形成異常の病態解明ならびに治療法開発へ利用されることが期待されます。

本研究成果は日本時間2019年3月18日付けLancet誌が運営する学術誌「EBioMedicine」電子版で掲載されました。本研究は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)などの支援を受けて行われました。

【用語説明】

注1. ヌーナン症候群・コステロ症候群・CFC症候群:低身長・心奇形・肥大型心筋症・骨格異常・易発がん性を含む先天性疾患。お互いに症状が似ているため臨床症状だけでは鑑別が難しい場合がある。これらの疾患は国の指定難病とされている。

注2. RIT1: HRAS, KRAS, NRASと同じRASがん遺伝子のサブファミリーである。ヌーナン症候群の原因として同定されるまではその機能はほとんど不明であった。

注3. βアドレナリン受容体作動薬:心臓の拍動数と収縮力を増大させ,末梢血管を拡張させる薬。本研究で使用したイソプロテレノールは、徐脈、房室ブロック、気管支喘息等の治療に用いられる。

図1. RASopathiesとその原因遺伝子
(Aoki et al. Journal of Human Genetics 2016より一部改編)

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科遺伝医療学分野
教授 青木 洋子(あおき ようこ)
助教 井上 晋一(いのうえ しんいち)
電話:022-717-8139
Eメール:sinoue*med.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

(取材に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
電話:022-717-7891
FAX:022-717-8187
Eメール:pr-office*med.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

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