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レーザー照射下の高分子材料をX線位相で観察 高分子レーザー加工の三次元動的可視化に成功

【発表のポイント】

  • レーザー加工は広く普及している技術ですが、被加工材料の内部でどのような構造的変化が起こっているか、十分に理解されているとは言えません。
  • 軽元素からなる材料(高分子材料など)に有効とされるX線位相CTを高度化し、高分子材料をレーザー加工する際の動的変化(融解、発泡、亀裂生成、灰化など)を三次元的に可視化することに成功しました。
  • 加工のミクロプロセス、加工スピード、あるいは、加工点周辺へのダメージの進展などについて、視覚的かつ定量的な情報をもたらし、当該分野の技術向上に大いに貢献するものと期待されます。

【概要】

東北大学多元物質科学研究所の百生敦教授(高輝度光科学研究センター客員主席研究員)らのグループは、科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業ERATOの一環として、高分子レーザー加工の様子を三次元的かつ動的に可視化する技術を開発しました。

これは、高分子材料などの軽元素からなる物質に優れた感度を持つX線CT(X線位相CTという)に基づくものであり、大型放射光施設SPring-8注1)を用いることにより、さらに高速三次元撮影を可能とするものです。シンクロトロン放射光による試料への照射ダメージが危惧されましたが、X線位相CTに適したフィルターを施すことで問題を回避し、この開発を成功させました。

一方、非接触で高精度な加工を可能とするレーザー加工が広く普及していますが、その加工性能は、加工表面を見ることによって判断されます。しかし、表面からは見えない材料の中のミクロなスケールにおいてどのような変化が起こっているか、十分に理解されているとは言えません。このような情報を獲得できれば、より高度な加工制御が可能となってくるものと期待されます。

そこで、今回開発した動的X線位相CTを高分子材料のレーザー加工モデルに適用し、動的変化(融解、発泡、亀裂生成、灰化など)を三次元的に可視化することに成功しました。レーザービームのサイズを大きく超える範囲で融解や発泡が進展していく様子が定量的に捉えられました。レーザー加工に関するこれまでにない知見を獲得するツールとして大いに期待されます。

本成果は、2019年5月22日午前10時(英国時間)に「Scientific Reports」にてオンライン出版されました。

【用語説明】

注1)大型放射光施設SPring-8:
理化学研究所が所有する兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出す施設で、利用者支援はJASRIが行っている。SPring-8の名前はSuper Photon ring-8 GeVに由来。放射光とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げた時に発生する、細く強力な電磁波のこと。SPring-8では、この放射光を用いてナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究が行われている。

図1:開発した装置の基本構成
白色シンクロトロン光をいったん多層膜ミラーで反射させることにより、下流に設置するTalbot干渉計(G1とG2からなる)に適したバンド幅を持つビームに変換し、かつ、試料ダメージの問題を払拭した。CT計測用の回転台に固定した高分子試料に対し、回転軸に沿って赤外レーザー集光し、試料を照射した。撮影はフレーム数1,000/秒の高速X線カメラで撮影し、所定の画像演算を施すことにより4D位相CT画像を生成した。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
教授 百生 敦(ももせ あつし)
電話:022-217-5388
E-mail:atsushi.momose.c2*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所 広報情報室
電話:022-217-5198
E-mail:press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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