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絶滅危惧種の弱さをゲノム情報で評価 ~生態系保全への応用に期待~

【発表のポイント】

  • 急速な生物種の絶滅が世界的に進行しています。生態系保全の効率化を推進し、種の絶滅抑制に貢献する研究が求められています。
  • 絶滅危惧種の中には、環境省の保護増殖事業のように手厚い保護対策が取られているにも関わらず、保全効果がみられない希少種も少なくありません。
  • 広域に分布する普通種と、保全困難なもののゲノムにどのような違いがあるのかは分かっていません。
  • 本研究では、小笠原諸島の絶滅危惧植物とその近縁普通種のゲノム情報を比較し、絶滅危惧植物のみに見られる3つの遺伝的な特徴を見出しました。
  • 本研究成果により、ゲノム情報を用いた全く新しいアプローチによる種の絶滅危険性評価の実現が期待されます。

【概要】

東北大学大学院生命科学研究科の浜端朋子研究員と牧野能士教授らのグループは、京都大学大学院農学研究科、東京大学大学院理学系研究科附属植物園(小石川植物園)との共同研究により、小笠原諸島の絶滅危惧植物とその近縁普通種のゲノム情報を比較し、絶滅危惧種のゲノムに見られる特徴的な3つのパターン[遺伝的多様性の低下、有害な変異の蓄積、重複遺伝子(注1)の低含有率]を発見しました。この研究は、生物種の絶滅の危険性をゲノム情報から予測可能であることを示す重要な報告であり、保全生物学分野への応用が期待されます。本研究結果は、6月27日付のCommunications Biology誌(電子版)に掲載されました 。本研究は、環境省の環境研究総合推進費「遺伝情報解読ブレークスルーを活用した種の保存法指定種の最適保全管理(4-1605)」および「ゲノム情報に基づくテーラメイド生物多様性保全策の構築と検証(4-1902)」により実施されました。

【用語説明】

(注1)重複遺伝子:
ゲノム上で重複(コピー)が起きた遺伝子。遺伝子の重複により、2つになった遺伝子には変異が蓄積しやすくなります。変異により今までになかった新しい遺伝子機能が生み出される可能性が高まります。このように、遺伝子の重複は遺伝的な多様性や新規性を生み出すメカニズムとして注目されています。

図1. 本研究で解析を行った(絶)小笠原産絶滅危惧種と(普)広域に分布する普通種 個体数は推定の野生生育数を示しています。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
担当 牧野 能士 (まきの たかし)
電話:022-795-5585
E-mail: tamakino*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか (たかはし さやか)
電話: 022-217-6193
E-mail: lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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