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日韓共同研究でグラフェン準結晶状態の超高速変化を直接観測 次世代光デバイス制御に新たな自由度

【発表のポイント】

  • 日韓共同研究により、グラフェンを30度に「ねじって」2枚重ねることで実現される「準結晶」状態のグラフェンの伝導電子を直接観測し、その超高速ダイナミクスを追跡しました。
  • 従来のグラフェンとは全く異なり、「質量ゼロ」の電子が保存されたまま、超高速に2層間に大きな電場が生じていることがわかりました。
  • グラフェンは大規模通信を行う次世代光デバイスの有望な材料であり、本成果は準結晶状態を生み出す「ねじれ角」が超高速制御の新たな自由度として活用できることが分かりました。

【発表概要】

東京大学物性研究所の鈴木剛研究員、松田巌准教授、岡﨑浩三准教授、小森文夫教授らの研究グループは、九州大学大学院工学研究院の田中悟教授、東北大学電気通信研究所の吹留博一准教授の研究グループ及び韓国の成均館大学のJ.R.Ahn教授との共同研究で、グラフェンの準結晶(注1)状態における質量ゼロの電子の超高速変化を光電子分光(注2)の時間分解測定により直接観測、ダイナミクスの追跡に世界で初めて成功しました。その結果、準結晶グラフェンでは、「質量ゼロ」の電子が保存されたまま、0.1ps(ピコ秒、10-12秒)という超高速な時間で、層間に30mVの電圧印加がなされることが分かりました。

グラフェンは大規模な情報通信を行う次世代光デバイスの有力な材料であり、その情報を伝える高速電子の運動に高い注目が集まっています。中でも、「ねじれ角」をつけて積層したグラフェンは最近、超伝導状態が観測されるなど、新しい物性の発現が期待されています。本研究で用いられた準結晶状態のグラフェンは、2枚を30度に「ねじって」重ねることで実現します。

今回の発見で、準結晶状態及び「ねじれ積層」が、質量ゼロの電子の超高速移動において新しい制御法として利用できることが分かりました。今後、本研究成果を元に、質量ゼロ粒子による次世代光デバイス開発が大きく促進されることが期待されます。

本研究成果はアメリカ化学会の速報誌「ACS Nano」に掲載予定です(10月8日(火)オンライン版掲載予定。前後する可能性あり)。

図 本実験で得られた電子分布の光照射後の時間変化。
通常の2層グラフェンでは変化がないこと(左側)と比べて、ねじれた2層グラフェンでは上下の層で電子分布が逆に変化しました(右側)。これは超高速に2層間に大きな電場が生じていることを意味します。

【用語解説】

(注1) 準結晶
準結晶とは結晶ともアモルファス(非晶質)とも異なる、第三の固体物質ともいうべき状態で、特殊な秩序を有しています。この研究により、ダニエル・シェヒトマン博士に2011年のノーベル化学賞が授与されました。

(注2)光電子分光法
金属や半導体などの固体に紫外光以上のエネルギーを持つ光を照射すると、電子が放出されます。この電子を光電子と呼び、光電子のエネルギーや速度を分析することで固体中の電子の情報を抽出する実験法を光電子分光法といいます。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

東北大学電気通信研究所 総務係
TEL:022‐217‐5420
FAX:022‐217‐5426
E-mail:somu*riec.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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