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レム睡眠とノンレム睡眠では脳内の情報伝達の方向が逆転 〜記憶の固定などへの役割が異なる可能性を示唆〜

【発表のポイント】

  • 睡眠中にP波*1という脳波(脳幹で発生する脳波の一種)が観察されるが、半世紀以上もの間、その役割は不明だった。
  • P波はマウスの脳では観察されない、という通説に反して、この研究ではマウスの脳にもP波が存在することを世界で初めて発見した。
  • さらに、記憶に重要な海馬の活動とP波を同時に計測したところ、レム睡眠とノンレム睡眠で情報伝達の方向が逆転することを世界で初めて発見した。
  • これらの発見は、「睡眠」といっても、レム睡眠とノンレム睡眠とで生理機能、特に記憶の定着に関わる役割が異なる可能性を示す証拠となる。

【概要】

人生の3分の1もの時間を過ごす睡眠は、生存に必須の本能行動のひとつです。哺乳類の睡眠ステージは、レム(急速眼球運動)睡眠とノンレム睡眠からなり、それぞれ全く異なる脳活動を呈しています。東北大学大学院生命科学研究科(兼東北大学学際科学フロンティア研究所)の常松友美助教は、英国ストラスクライド大学の坂田秀三上級講師らと共に、レム睡眠とノンレム睡眠で、マウス脳内の海馬-脳幹間神経活動パターンが逆転することを明らかにしました。これは、睡眠状態によって、情報伝達の方向が逆転し得ること、さらには生理的役割が異なっていることを示唆しています。本研究結果は、eLife誌(電子版)に1月14日に掲載されました。

図1 世界で初めて計測に成功したマウスP波
赤い矢印が、検出されたP波を示している。これまでレム睡眠でのみ観察されると思われていたが、ノンレム睡眠でもP波が検出された。

【用語解説】

*1 P波:
主にレム睡眠時に脳幹の橋(Pontine)で発生するスパイク状の脳波。ネコでは、脳幹から、視床の外側膝状体(Lateral geniculate nucleus)、大脳皮質の後頭葉(Occipital cortex)へと脳波が伝わっていくため、PGO波とも呼ばれている。また、AI研究の結果を元に、フランシス・クリックは1983年に、P波は不要な記憶情報を消去するのに寄与する、という反学習仮説を提唱している。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
担当 常松 友美 (つねまつ ともみ)
電話番号: 022-795-4751
Eメール: tsune*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか (たかはし さやか)
電話番号: 022-217-6193
Eメール: lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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