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化学強化ガラスの強さを局所評価できる新手法を開発 ~落としても割れないスマホガラスの実現に向けて~

【発表のポイント】

  • 化学強化ガラス(*1)の強さの起源である残留圧縮応力の局所評価に成功
  • 従来法と比べて高い空間分解能(~1 μm)を有する
  • ガラス構造と強さの関係を理解できる
  • より強くて割れにくいガラスの開発や品質検査への応用が期待される

【概要】

東北大学大学院工学研究科応用物理学専攻の寺門信明助教と、佐々木隆成氏(当時、大学院修士課程)、高橋儀宏准教授、藤原 巧教授らは、有限会社折原製作所との共同研究により、化学強化ガラスにおける残留応力を高い空間分解能(~1 μm)で非破壊・非接触に評価する手法を開発しました。

スマホのカバーガラスとして爆発的に普及した化学強化ガラスですが、その強さ・割れにくさは残留圧縮応力とその空間分布に大きく左右されます(図1a)。しかし、従来の検査方法ではその空間分布を詳細に評価することが困難でした。今回、顕微ラマン分光(*2)と「詰め込み効果」(*3)と呼ばれる化学強化モデルに基づいて応力の局所評価式を導出し、市販の化学強化ガラスの応力分布を求めることに成功しました(図1b)。また、その評価式はガラスの組成や網目構造に関する情報を含むことから、「割れにくい」からより強くて「割れない」ガラスの開発や品質管理への応用が期待されます。

本研究成果は、英国オンライン科学誌「Communications Physics」に令和2年2月21日に掲載されました。

図1.a) 化学強化ガラスと圧縮応力層。圧縮応力がキズの伸展を防ぎガラスを割れにくくする。b) 新手法によって得られた残留応力の深さ依存性と顕微ラマン分光の概略図。強さの起源である残留圧縮応力の空間分布をレーザー光によって非破壊・非接触に評価できる。

【用語解説】

*1 化学強化ガラス: 詰め込み効果(*3)を利用して表面に圧縮応力を与えたガラスのこと.通常のガラスの弱点であった割れや傷に対する耐性を持つ.

*2 顕微ラマン分光: レーザー光を集光照射して散乱光スペクトルを局所評価する手法.ガラス固有の網目構造などに関する情報を得ることができる.

*3 詰め込み効果: ガラス内部のアルカリイオンをイオン半径のより大きなものに交換することによってガラスの網目構造が圧迫される現象のこと

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関して)
藤原 巧(フジワラ タクミ)
東北大学大学院工学研究科 応用物理学専攻 教授
電話 022-795-7964
E-mail: fujiwara*laser.apph.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

寺門 信明(テラカド ノブアキ)
東北大学大学院工学研究科 応用物理学専攻 助教
電話 022-795-7965
E-mail: terakado*laser.apph.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関して)
東北大学工学研究科情報広報室 担当 沼澤 みどり
TEL: 022-795-5898
E-mail: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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