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筋ジストロフィー(ジスフェルリン異常症)の新規治療標的を発見 - 疾患モデル動物の症状を改善させることに成功 -

【発表のポイント】

  • 筋細胞の膜タンパク質ジスフェルリン注1の欠損によって発症する筋ジストロフィー(ジスフェルリン異常症)は、筋細胞膜の損傷時の修復機能が損なわれ、筋肉の萎縮と筋力の低下といった障害を示す根治療法のない国の指定難病である。
  • 筋細胞膜の修復に必要な分子として、AMPKタンパク質複合体注2を新規に発見した。
  • 薬剤によるAMPKの活性化によって、ジスフェルリン異常症患者由来の筋細胞膜修復機能およびジスフェルリン異常症モデル動物の筋力低下や筋損傷を改善させることができた。

【概要】

東北大学大学院医学系研究科神経内科学分野の青木正志(あおき まさし)教授らの研究グループは、ジスフェルリンタンパク質の異常によって発症する筋ジストロフィー(ジスフェルリン異常症)の治療標的となり得る新規の因子を発見しました。(図1)。

ジスフェルリン異常症は、筋肉細胞の膜タンパク質ジスフェルリンの異常によって引き起こされる成人発症の筋ジストロフィーの総称です。ジスフェルリンの欠損によって、筋細胞膜の損傷時の修復機能が損なわれ、その結果として筋細胞の変性・壊死が生じ、筋肉の萎縮と筋力の低下につながると考えられています。本研究では、ジスフェルリンに結合するタンパク質として新たにAMPK複合体を同定し、AMPK活性化剤(アカデシン)を投与することにより、ジスフェルリン異常症患者由来の筋細胞膜の修復機能が改善することを見出しました。さらに、薬剤(メトホルミン)投与によりAMPKを活性化させると、ジスフェルリン異常症のモデル動物での筋力低下や筋損傷を改善することを示しました。本研究で得られた知見から、ジスフェルリン異常症の治療法の開発が進むと期待されます。

本研究成果は、米国遺伝子細胞治療学会の機関誌である「Molecular Therapy」のオンライン版に、米国時間2020年2月12日に掲載されました。

図1. 薬剤投与によって骨格筋のAMPKを活性化させることにより、骨格筋の細胞膜修復機能が改善し、筋ジストロフィーの症状進行を抑制することができた。

【用語解説】

注1. ジスフェルリン:筋肉細胞に存在する2080アミノ酸残基からなる巨大タンパク質

注2. AMPKタンパク質複合体:AMP活性化タンパク質リン酸化酵素(AMPK)の複合体。細胞内のエネルギー源であるATP(アデノシン-3-リン酸)が分解されてできるAMPによって活性化されることから、細胞内のエネルギーセンサーとしての役割を担っている。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科神経内科学分野
教授 青木正志(あおきまさし)
非常勤講師 鈴木直輝(すずきなおき)
非常勤講師 小野洋也(おのひろや)
電話番号:022-717-7189
FAX番号:022-717-7192
Eメール:aokim*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
Eメール:naoki*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
Eメール:onohiroya*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学加齢医学研究所
講師 菅野新一郎(かんのしんいちろう)
電話番号:022-717-8469
Eメール:shinichiro.kanno.a6*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(取材に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
電話番号:022-717-7891
FAX番号:022-717-8187
Eメール:pr-office*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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