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アフリカで栽培されているイネが、太陽紫外線UVBに弱い原因を発見 -アフリカ栽培イネの生産性向上に期待-

【発表のポイント】

  • 地球規模での食料問題や環境問題は、アフリカにとって深刻な問題であり、作物の生産性向上の開発が強く求められている。
  • 太陽紫外線UVB量の増加は、植物の生育障害を引き起こすことが知られているが、UVB量が高い地域で栽培されているアフリカ栽培イネは、アジアの栽培イネよりも著しく弱い形質を示した。
  • UVBによって誘発されるDNAの傷を修復する酵素(光回復酵素*1)が、アジアのイネには見られない固有のアミノ酸配列を有し、その配列が結果として、アフリカ栽培イネがUVBに弱い形質を示す原因となっていることを突き止めた。
  • 本研究成果は今後のアフリカ地域でのイネの生産性向上に寄与することが期待される。

【概要】

生物にとって有害な太陽紫外線UVB量が比較的多い地域に自生し、栽培化されたアフリカ栽培イネ(オリザ グラベリーマ:Oryza glaberrima)は、アジアのイネ品種(オリザ サティバ:Oryza sativa)よりもUVBに対して強いと考えられていましたが、その詳細は不明でした。東北大学大学院生命科学研究科の日出間純准教授らのグループが、アフリカ各地で現在栽培されているイネ15品種のUVB抵抗性を調査したところ、驚くべきことに、調査した大部分のイネ品種はアジア各地で栽培されているイネ品種よりも大変弱いことが判明しました。さらにその原因を調べたところ、UVBによって誘発されるDNAの傷(DNA損傷:シクロブタン型ピリミジン二量体)を修復する酵素(光回復酵素*1)が、アジアのイネ品種には見られない固有のアミノ酸配列を有し、その固有のアミノ酸配列が原因でDNA損傷を修復する効率が悪くなり、結果としてUVBに弱い形質を示すことを発見しました。本研究成果は、アフリカにおいて深刻な社会問題となっている穀類の生産性向上に向けた育種・品種開発に貢献することが期待されます。本研究成果は、2月21日付でScientific Reports誌(電子版)に掲載されました。本研究は、文部科学省科学研究費補助金の支援を受けて行われました。

図1 アフリカ、アジアで栽培されているイネの太陽紫外線UVBに対する強さの違いと、その違いの要因となる光回復酵素のアミノ酸配列。写真の左(-UVB)は、可視光のみで栽培したイネの写真、右(+UVB)は、可視光に紫外線を付加した条件で栽培したイネの写真。イネの写真の下の記号は光回復酵素アミノ酸配列の型を示す。P78-R126-A283-Q296は、光回復酵素のアミノ酸配列の78、126、283、296番目のアミン酸が、それぞれプロリン(P)、アルギニン(R)、アラニン(A)、そしてグルタミン(Q)を意味する。Sはセリン、Hはヒスチジンを示す。

【用語解説】

*1光回復酵素:
紫外線によって誘発されるDNAの傷の1つであるシクロブタン型ピリミジン二量体を特異的に修復する酵素である。この酵素は有胎哺乳類を除くすべての生物が保有する酵素であり、青色の光をエネルギー源として利用して傷を修復する。太陽光の下で生きる植物にとって、重要な酵素である。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
担当 日出間 純 (ひでま じゅん)
電話番号: 022-217-5690
E-mail:jun.hidema.e8*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか (たかはし さやか)
電話番号: 022-217-6193
E-mail:lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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