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実験データに隠された非線形力学モデル同定のための新しい計算手法を開発 -非線形力学のホワイトボックス解析に貢献-

【発表のポイント】

  • 非線形力学のスパース同定の新しい計算手法をエネルギーとラグランジアンを用いて実現した。
  • Proc. Nat. Acad. Sci, 2016に報告されている先行研究手法よりも正確な力学モデル同定を実現した。
  • ニューラルネットワークなどのブラックボックスによる同定ではなく、解析的なモデルを獲得するホワイトボックスによるアプローチであるため、非線形力学解析に貢献しうる。

【概要】

東北大学大学院工学研究科の林部充宏教授とHoang K. Chu学部生(国際機械工学コース(IMAC))らの研究グループは、非線形力学のスパース同定注1に関する新しい計算手法をエネルギーとラグランジアン注2を用いて開発しました。Proc. Nat. Acad. Sci, 2016に報告されている先行研究手法のスパース同定よりも正確な非線形力学モデル同定を実現しました。先行手法では採用されていなかったラグランジアンに基づく非線形力学スパース同定手法を提案しました。ニューラルネットワークなどのブラックボックスによる同定ではなく、解析的なモデルを獲得するホワイトボックス注3によるアプローチであるため、非線形力学解析に貢献しうる計算技術と期待されます。

本研究成果は、ロボット分野で最もメジャーな国際会議IEEE ICRA2020のJournal Optionとして採択され、科学雑誌「IEEE Robotics and Automation Letters」に2020年1月31日付けで掲載されました。

図1 多自由度システムの力学をエネルギーとラグランジアンを介して獲得する模式図

【用語解説】

注1: スパース同定
スパースは「すかすか」「少ない」を意味し、圧縮センシングの一技法で膨大なビッグデータを解析して大量のデータに埋もれて見えにくくなってしまう有為な情報を抽出したり、法則性を導き出したりする計算手法

注2: ラグランジアン
フランスの物理学者Joseph-Louis Lagrangeが定式化した物理的な力学系の動力学を記述するために用いられる一般化座標とその微分、および時間を変数とする関数で運動エネルギーと重力エネルギーの差を意味する

注3: ホワイトボックス
深層学習などのAI手法では内在する物理法則の解析的記述とは関係のない関数の組み合わせでシステムの入出力を表現する中身の構造自体が意味を持たないブラックボックスとなるが、物理法則の解析的記述と連動する状態変数による構造に意味を持たせた表現をホワイトボックスと呼ぶ

詳細(プレスリリース本文)PDF

関連動画(「エネルギーとラグランジアンのスパース同定に基づく解釈可能なホワイトボックス力学モデルの獲得」:東北大学Youtube外部サイトへ

問い合わせ先

(研究に関して)
東北大学大学院工学研究科 ロボティクス専攻
教授 林部 充宏
電話:022-795-6970
E-mail: mitsuhiro.hayashibe.e6*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関して)
東北大学工学研究科情報広報室 担当 沼澤 みどり
電話:022-795-5898
E-mail: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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