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記憶の存続時間をがん遺伝子が調節する

【発表のポイント】

  • 数日間保持されるショウジョウバエの餌の記憶の仕組みを研究
  • 記憶が長期化されるときにがん遺伝子MAPK*1の働きが促進されることを発見

【概要】

記憶の存続は、数秒で忘れてしまうものから数十年にわたって憶えているものまで、非常に大きなばらつきがあります。記憶が定着するためには、記憶の長期化というプロセスが重要です。アルツハイマー型認知症などの記憶障害は、記憶の長期化にまず問題が生じることが多く、この仕組みを理解することは喫緊の課題です。ショウジョウバエはたった一分間の学習で餌の匂いを数日間にわたって記憶することが知られており、記憶の長期化の仕組みを研究する上で良いモデルです。

今回、東北大学生命科学研究科の市之瀬敏晴助教(学際科学フロンティア研究所兼担)、谷本拓教授らのグループは、MAPKというがん遺伝子の働きが、記憶が長期化されるときに促進されることを発見しました。さらに、ドーパミンという脳内分泌物質が、 そのスイッチを入れる役割を果たしていることを突き止めました。MAPKや、ドーパミンを受け取る遺伝子が抑制されたハエは、記憶を長期化することができません。今回の発見は、神経細胞でのMAPKの働きと、その制御機構を明らかにしたといえます。

本研究結果は2020年2月26日にJournal of Neuroscience誌に掲載されました。本研究は、文部科学省科学研究費補助金の支援を受けて行われました。

左:記憶を形成するケニオン細胞(マゼンタ)において、リン酸化型(活性型)MAPKタンパク質(水色)を可視化した。学習によってリン酸化型MAPKが増大すること、またその増大にDop1R2が必要であることを発見した。
右:学習によってドーパミンが放出され、Dop1R2とRafを介してMAPKを活性化し、記憶を安定化する。

【用語解説】

*1 MAPK: Mitogen-activated Protein Kinase (分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ)。細胞増殖など様々な細胞機能を調節し、がん遺伝子としても知られる。

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問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
担当 谷本 拓 (たにもと ひろむ)
   市之瀬 敏晴 (いちのせ としはる)
Tel: 022-217-6223
E-mail:hiromut*m.tohoku.ac.jp, toshiharu.ichinose.c1*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか (たかはし さやか)
Tel: 022-217-6193
E-mail:lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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