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ホヤの幼生がオタマジャクシ型になる仕組みを発見 -上皮細胞の「くびれ」を創り出す新しい原理-

【発表のポイント】

  • ホヤのオタマジャクシ幼生の「くびれ」は、細胞が胴部と尾部間で明瞭な境界を保ちつつ異なった方向に分裂することによって創られることが明らかになった。
  • 組織、器官、体全体の形づくりの更なる理解につながる。

【概要】

動物の組織や器官は、細胞が適切な位置に配置されることで形成されます。例えば、方向性を持った細胞分裂によって組織が伸長したり、厚さが増加したりすることが知られています。しかし、方向性を持った細胞分裂がそれ以外の形づくりに関与するのかは不明でした。東北大学大学院生命科学研究科附属浅虫海洋生物学教育研究センターの中本章貴助教と熊野岳教授は脊索動物門*1に属するマボヤ(Halocynthia roretzi) *2を用い、オタマジャクシ幼生の形が方向性を持った細胞分裂によって創られることを明らかにしました。脊索動物にはオタマジャクシ幼生(あるいは尾芽胚)と呼ばれる時期があり、胴部と尾部の境界が砂時計型の「くびれ」として形成されることが特徴の1つです。研究の結果、将来胴部となる前方の上皮細胞と将来尾部となる後方の上皮細胞が、明瞭な境界を保ちつつ異なった方向に分裂することによって「くびれ」が形成されることが明らかになりました。組織や器官の一部に「くびれ」や「凹み」が形成される仕組みは幾つかの動物で明らかにされていますが、細胞の分裂方向の制御が重要であるとの報告は、本研究が初めてです。今回の発見は、形づくりの新しい原理を提供するものです。本研究成果は2020年3月7日のiScience誌(電子版)に掲載されました。

本研究は文部科学省科学研究費補助金、住友財団、山田科学振興財団、成茂動物科学振興基金の支援を受けて行われました。

マボヤの幼生(左)と成体(右)

【用語説明】

*1脊索動物門:脊索を持つ動物のグループ。脊椎動物では発生の過程で一時的に脊索が形成され、後に脊髄に置き換わる。

*2マボヤ(Halocynthia roretzi):主に東北地方で食用に養殖されるとともに、発生研究の材料としても用いられる。東北大学浅虫臨海実験所で初めて人工的に放卵、放精させることに成功して以降、ホヤを用いた発生研究が世界に拡がった。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
担当 中本 章貴 (なかもと あやき)
電話番号: 017-752-3379
E-mail:ayaki.nakamoto.a4*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか (たかはし さやか)
電話番号: 022-217-6193
Eメール: lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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