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二酸化炭素を吸着してスピン状態を変える金属錯体の合成に成功! ー新たな金属錯体型ガスセンサーの開発へ期待ー

【ポイント】

  • 室温で選択的に二酸化炭素を吸着し、吸着前後で異なるスピン状態(=電子状態)を示す金属錯体の合成に成功
  • 電子状態変換に必要なエネルギーが小さいコバルト(II)イオンを使用
  • 二酸化炭素を検知する金属錯体型ガスセンサーとしての利用に期待

【概要説明】

熊本大学大学院先端科学研究部の速水真也 教授、仲谷学 博士(現・城西大学 助教)、東北大学金属材料研究所の高坂亘 助教、宮坂等 教授らは、室温で二酸化炭素を吸着し、吸脱着に伴ってスピン状態を変化させるコバルト(II)錯体の開発に成功しました。

コバルト(II)錯体は、金属イオンと有機物(配位子)からなる「金属錯体」に分類される化合物です。本研究で報告したコバルト(II)イオンとターピリジン配位子からなるコバルト(II)錯体(図1)は、熱や光、圧力などの外部刺激に応答してスピン状態を変化させる磁気特性(スピンクロスオーバー現象)※1を示す化合物(以下、スピンクロスオーバー錯体)であり、様々な外部刺激に応答するセンサーやメモリデバイスなどの開発に向けて注目されている物質です。一方で、ガス分子などの化学的な刺激に対して選択的に応答するスピンクロスオーバー錯体も注目されていますが、二酸化炭素や酸素、窒素といった一般的なガス分子は、分子サイズも小さく金属錯体の電子状態への影響が小さいため、これらガス分子に対する応答性の研究は未だ例が限られていました。

本研究では、室温で大気圧の二酸化炭素を選択的に吸着し、その吸脱着に応答しスピンクロスオーバーを起こすコバルト(II)錯体を開発しました。

本研究成果は、金属錯体型ガスセンサーの開発へ向けた新しい分子設計の指針になることが期待されます。

本研究成果は、2020年3月18日付でドイツ化学会誌「Angewandte Chemie International Edition」に掲載されました。

図1. 本研究で合成したコバルト(II)錯体およびその結晶構造。

【用語解説】

※1 スピンクロスオーバー現象 主に鉄イオンやコバルトイオンが示す二種類の電子状態(低スピン状態と高スピン状態)を、様々な外部刺激(温度や圧力、光など)によって変えることができる現象。

詳細(プレスリリース本文)※2020年4月17日に訂正版へ差替PDF

※1頁目の概要説明を以下のとおり訂正いたしました。(2020年4月17日)

<訂正前>

本研究では、室温で大気中の二酸化炭素を選択的に吸着し、

<訂正後>

本研究では、室温で大気圧の二酸化炭素を選択的に吸着し、

問い合わせ先

◆研究内容に関すること
東北大学金属材料研究所 錯体物性化学研究部門 教授
宮坂 等(ミヤサカ ヒトシ)
電話:022-215-2030
FAX:022-215-2031
e-mail:miyasaka*imr.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

◆報道に関すること
東北大学金属材料研究所 情報企画室広報班
冨松 美沙(トミマツ ミサ)
電話:022-215-2144
FAX:022-215-2482
e-mail:pro-adm*imr.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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