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細胞中の温度を無染色で画像化する技術の開発 ~「細胞内の水」を用いる画期的方法~

【発表のポイント】

  • 細胞の中にある水を測定することで、細胞内の温度を無染色で計測する新たな手法を開発した。
  • 薬剤の添加に伴う細胞質内の温度上昇を、専用の色素を用いずに測定・画像化することに成功した。
  • 細胞内のほぼすべての領域に水があるため、細胞内および細胞外の全領域の温度を一度に測ることができる。

【概要】

健康状態を知るために体温の計測を行うように、生物の最小単位である細胞の「健康状態」などを知るために、細胞一つひとつの温度測定が必要な場合があります。東北大学大学院薬学研究科の杉村俊紀大学院生、梶本真司講師、中林孝和教授の研究グループは、細胞の中にある水を観測することで、細胞内の温度分布を無染色で可視化する測定法の開発に成功しました。

私達は従来の単一細胞の温度測定には、温度に応答する蛍光色素を細胞内にあらかじめ導入する必要がありました。本研究では、ラマン顕微鏡と呼ばれる手法を用いて細胞内の水を観測することで、蛍光色素を用いることなく、細胞内温度をその場で測定することに成功しました。薬剤の細胞内導入に伴う細胞内温度の上昇も測定できます。本手法は、細胞の活性状態の判別だけではなく、様々な生理現象および疾患の発症機序の解明にも応用が期待できます。

本研究成果は、ドイツ化学会誌"Angewandte Chemie International Edition"に令和2年5月11日に掲載されました。

図1. (a) 細胞を培養する水溶液(HBSS)の温度を25〜45 ºCの範囲で変化させた際の水のO-H伸縮振動バンド。(b) 30 〜45 ºCのHBSSのラマンスペクトルと25 ºCのHBSSのラマンスペクトルとの差スペクトル。(c) 各温度のHBSSのラマンスペクトルについて、3548cm-1の強度と3179cm-1の強度の比をとり、温度に対してプロットしたもの。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

東北大学大学院 薬学研究科 生物構造化学分野
中林 孝和
TEL : 022-795-6855
E-mail : takakazu.nakabayashi.e7*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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