本文へ
ここから本文です

iPS細胞で疾患の原因に迫る 糖尿病患者由来のiPS細胞を用いて動脈硬化を抑える因子を発見

【発表のポイント】

  • 糖尿病患者のうち動脈硬化などの心血管疾患を持つ患者・持たない患者それぞれのiPS細胞から血管細胞(内皮細胞と血管平滑筋細胞)を作製し、両者の違いを解析した。
  • 心血管疾患を持たない患者由来の血管平滑筋細胞では、小胞体注1内エステラーゼ注2遺伝子の量が心血管疾患を持つ患者由来の細胞よりも上昇しており、これが心血管疾患の進行と関連すると考えられた。
  • 疾患特異的iPS細胞は、疾患における細胞の機能を解析し、新たな治療薬を探索するために有用であることが示された。

【概要】

糖尿病においては、動脈硬化などの心血管疾患を持つ患者と持たない患者がいることが知られていますが、この違いが生じる仕組みについては未だ明らかにされていませんでした。東北大学大学院医工学研究科分子病態医工学分野・医学系研究科病態液性制御学分野の豊原敬文特任助教と阿部高明教授らのグループは米国ハーバード大学と共同で、糖尿病患者由来のiPS細胞を用いて、糖尿病における合併症の一つである動脈硬化を抑制する仕組みを発見しました。心血管疾患を示さない糖尿病患者由来のiPS細胞から作製した血管平滑筋細胞においては、小胞体内エステラーゼの遺伝子の発現が上昇しており、心血管疾患の進行を抑える役割をしていることが明らかとなりました。疾患特異的iPS細胞は、疾患における細胞の機能を解析し、新たな治療薬を探索するために有用であることが示されました。

本研究成果は、2020年5月14日午前11時(現地時間、日本時間5月15日午前0時)米国科学会誌 Cell Stem Cell(電子版) に掲載されました。

図1.糖尿病患者よりiPS細胞を作製し血管細胞に分化して遺伝子を比較した

【用語解説】

注1. 小胞体:細胞小器官の一つで、脂質やステロイドの合成、タンパク質の成熟化を担う。

注2. エステラーゼ:エステル結合を持つエステルを水との化学反応で酸とアルコールに分解する酵素。AADACは中性脂肪を加水分解するリパーゼとしても働く。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医工学研究科分子病態医工学分野
助教 豊原敬文
電話番号:022-717-7163
Eメール:toyohara@med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学大学院医工学研究科分子病態医工学分野
東北大学大学院医学系研究科病体液性制御学分野
教授 阿部 高明
電話番号:022-717-7163
Eメール:takaabe@med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(取材に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
東北大学病院広報室
電話番号:022-717-7891
FAX番号:022-717-8187
Eメール: pr-office@med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

このページの先頭へ