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超軽量リハビリ装具で脳卒中患者の歩行を改善 〜バネ−カム機構を装着するだけで膝が曲がりやすく転倒予防に!〜

【発表のポイント】

  • 脳卒中注1の後遺症による片麻痺注2患者への歩行リハビリテーション装具(短下肢装具Ankle Foot Orthosis: AFO注3)に容易に取り付け可能なデバイスを開発
  • バネ-カム機構注4を用いることで超軽量かつモーターレスな蹴り出し補助を実現
  • 開発した装具によるアシスト効果によって、つまずきによる転倒を予防する効果に期待

【概要】

脳卒中患者の数は、超高齢社会の日本では増加の一途をたどっています。脳卒中患者にとって歩行リハビリの質の向上は、「生活の質(Quality of Life: QOL)」の向上に直結する重要な課題です。

東北大学医学系研究科 関口雄介非常勤講師、同大学工学研究科 大脇大准教授、NEC 野崎岳夫、福司謙一郎研究員らの医工学、産学連携研究グループは、モーターレスでシンプルなバネ-カム機構を用いた超軽量歩行アシストデバイスを開発しました。脳卒中片麻痺患者11名を対象とした臨床実験の結果、歩行中の蹴り出し補助のみならず、副次的に、遊脚注5の膝が曲がりやすくなる効果を確認しました。この効果は、歩行中のつまずきによる転倒予防につながると考えられ、多くの患者の福音となることが期待されています。

本研究成果は、2020年7月2日に臨床研究に関する科学誌Gait & Posture電子版に掲載されました。

図A:開発したバネ-カム機構を有するデバイス(写真は右足用)。AFO(Gait Solution; Pacific Supply Co., Ltd., Japan)が480gに対して、研究グループが開発したアタッチメントは65gと超軽量かつモーターレス。中央下部に見えるネジ(地面とは非接触)で、個人の脚力に応じた調整が可能。
図B: 蹴り出しアシスト効果のメカニズム。足首が背屈注6方向に回転すると、カム機構によりバネが変位し、蹴り出し方向のモーメント(回転力)を発生。

【用語解説】

注1 脳卒中:脳に向かって血液が流れている動脈が破裂、詰まるなどし、血液の流れを途絶することにより脳の組織の一部が壊死し、突然症状が現れる病気。

注2 片麻痺:片側の運動を司る脳の病変や損傷により、損傷した脳とは対側の上肢と下肢に運動麻痺が生じた状態。

注3 短下肢装具(Ankle Foot Orthosis):足首の動きを制限、補助、制動(ブレーキをかける)することにより、足首に障害を生じた患者の歩行や立つことを補助するリハビリ用医療機器。足部から膝下までの長さの装具のことを短下肢装具という。

注4 カム機構:運動の方向を変える機械要素。回転する軸に取り付け、回転角度に応じて半径が変化する形状(カム曲線)をもつ。例、ガソリンエンジン吸排気バルブ。

注5 立脚期、遊脚期:歩行中、足が地面に着いている期間が立脚期、足が地面に着いていない期間が遊脚期と定義されている。それぞれの期間にある脚を、立脚、および遊脚という。

注5 立脚期、遊脚期:歩行中、足が地面に着いている期間が立脚期、足が地面に着いていない期間が遊脚期と定義されている。それぞれの期間にある脚を、立脚、および遊脚という。

注6 背屈、底屈:足首が上方向に曲がることを背屈、下方向に曲がることを底屈という。

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問い合わせ先

東北大学大学院医学系研究科 
担当 出江紳一、関口雄介
電話: 022-717-7338
E-mail: izumis*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学大学院工学研究科
担当 大脇大
電話: 022-795-4064
E-mail: owaki*tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

(報道に関して)
東北大学工学研究科情報広報室 担当 沼澤 みどり
電話: 022-795-5898
E-mail: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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