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歯をつくる細胞から毛髪細胞へ変化させる分子を同定 -上皮が陥入した細胞から異なる器官が作られる仕組み解明に期待-

【発表のポイント】

  • 毛や汗腺、歯などの器官の発生過程やその関連分子の発現は類似している。歯のエナメル質をつくるエナメル芽細胞では、Sox21タンパク質が強く発現していることを発見。
  • エナメル芽細胞で発現しているSox21を欠失させると、エナメル質の形成が阻害され、毛髪状の器官が形成された。
  • Sox21の欠失により、Nカドヘリン注1やEカドヘリンの発現が調節され、歯の上皮系細胞注2の一部が骨や血管などを作る間葉系細胞注3へと変化することを見い出した。

【概要】

毛や汗腺、歯などの器官の発生過程やその関連分子の発現は類似していますが、皮膚が陥入してできる毛髪と口腔上皮から陥入してできる歯との器官発生の差については不明でした。東北大学病院小児歯科の齋藤幹講師及び、東北大学大学院歯学研究科小児発達歯科学分野の福本敏教授らのグループは、歯のエナメル質をつくるエナメル芽細胞でSox21タンパク質が高発現していることを見い出しました。Sox21タンパク質の発現を阻害したところ、成熟エナメル芽細胞で発現するはずの分子の発現が抑制される代わりに、毛髪や皮膚で発現している分子の強い発現が確認されました。

本研究成果は、歯に限らず、他の上皮由来器官への分化転換のメカニズムの理解や新たな組織再生療法の開発に貢献することが期待されます。

本研究結果は米国東部時間の2020年6月30日にCell Pressが発刊する iScience誌(電子版)に掲載されました。

【用語解説】

注1 カドヘリン:
細胞と細胞を繋げる細胞接着因子で、主にEカドヘリンは上皮系細胞、Nカドヘリンは間葉系細胞で発現する。

注2 上皮系細胞:
体表や器官の管腔の表面を覆っている組織

注3 間葉系細胞:
骨や血管などを作る細胞

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学病院 小児歯科
講師 齋藤 幹(さいとう かん)
E-mail:kanta*dent.tohoku.ac.jp

(報道に関すること)
東北大学病院広報室
電話:022-717-7149
E-mail:pr*hosp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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