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需要―供給バランスに依存する花と昆虫の取引のネットワーク ―効率のよい取引を妨げる送粉のジレンマ―

【概要】

ハナバチなどの昆虫は、花蜜を対価に、花から花へと花粉を運ぶ「送粉サービス」を提供します。提供するサービスの質は、昆虫によってさまざまです。結実には同じ種類の植物の花粉が必要なため、特定の植物種だけを相手にする「専門店」の昆虫の方が、質の高いサービスを提供します。昆虫にとっても、自分だけを利用してくれる植物は確実に蜜を得られる「お得意さん」です。しかし実際の生態系では、専門店とお得意さんの関係は多くはありません。

京都大学生態学研究センター 酒井章子 教授・東北大学生命科学研究科 近藤倫生 教授らの研究グループは、その理由をゲーム理論にもとづいて解析し、専門店とお得意さんの関係はサービスの需要と供給が釣り合っているときにしか維持できないことを明らかにしました。どちらかが多すぎると、植物同士、昆虫同士の競争が、効率のよい関係を壊してしまうのです。この研究では、この現象を「送粉のジレンマ」と名付けました。生態系では、いろいろな生物が複雑な取引のネットワークを作っていますが、今後それらのネットワークについて、需要と供給のバランスという新しい視点での研究が進むことが期待されます。

本成果は、2020年8月20日にWiley-Blackwellおよびフランス国立科学研究センターが発行する国際学術誌「Ecology Letters」にオンライン掲載されました。

【用語解説】

ゲーム理論:社会や自然界における複数主体(プレイヤー)が関わる意思決定の問題や行動の相互依存的状況を解析するための理論。

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問い合わせ先

(報道に関すること)
東北大学大学院 生命科学研究科広報室
TEL:022-217-6193
E-mail:lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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