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宇宙マウス研究から健康長寿のヒントを発見 〜宇宙環境で加速する加齢変化を食い止める遺伝子〜

【発表のポイント】

  • 遺伝子ノックアウトマウス※1の宇宙滞在生存帰還実験に世界で初めて成功し、宇宙長期滞在が加齢変化を加速させることを明らかにしました
  • 宇宙滞在によるマウス血液代謝物変化は、東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)の有するコホート血液データとの比較により、ヒトの加齢と有意な関連を示すことが明らかとなりました
  • 転写因子※2Nrf2は宇宙環境ストレスによる加齢変化加速を食い止め健康を維持するために働くことがわかりました
  • 宇宙滞在中の健康リスク克服および地上における様々な加齢性疾患の予防や治療への臨床応用が期待されます

【概要】

人類が宇宙進出を果たすためには、宇宙放射線や微小重力環境などの宇宙環境ストレスによる健康リスクを克服することが必要です。東北大学大学院医学系研究科の鈴木隆史講師(医化学分野)、山本雅之教授(医化学分野、ToMMo機構長)および宇宙航空研究開発機構(JAXA)の芝大技術領域主幹らは、宇宙長期滞在によって加齢変化が加速すること、また宇宙ストレスによってNrf2が活性化し、この加齢変化加速を食い止め健康を維持するために働くことを明らかにしました。

月探査協力に関する文部科学省と米航空宇宙局(NASA)の共同宣言に、今後、日本人宇宙飛行士の月面での活動機会を可能とするための取決めを策定することなどが盛り込まれた有人宇宙探査時代に向けて、この知見を活用した宇宙滞在における健康リスクの克服が期待されます。また加齢についての研究および高齢者の健康を守る研究等に発展することが期待されます。

本成果は、ToMMoとJAXAとの「健康長寿社会実現への貢献を目指した「きぼう」利用に係る連携協定(2019年2月8日)」で得られた初の科学成果となります。また、日本時間 2020 年 9月 8日にNature Researchが提供するオープンアクセス学術誌「Communications Biology」のオンライン版で公開されました。

第3回小動物飼育ミッション※3の結果を含め、両機構の連携協力によって初めて実現可能な宇宙と地上の研究をつなげるためのマウスデータベースの一部について、2020年度中に公開を予定しています。

【図1】Nrf2遺伝子は宇宙ストレスによる加齢変化を食い止める(©東北大)
国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟におけるNrf2遺伝子ノックアウトマウスの飼育を行いました。微小重力や宇宙放射線などによる宇宙ストレスは、遺伝子発現、血中代謝物、白色脂肪細胞サイズなどの加齢変化を引き起こします。Nrf2は宇宙ストレスに応答して活性化し、これらの加齢変化をNrf2は食い止めます。

【用語解説】

※1 遺伝子ノックアウトマウス
特定の遺伝子が無効化された遺伝子組換えマウス。遺伝子産物の機能を調べるために重要なモデル動物。

※2 転写因子
DNAに結合して遺伝子の発現を制御するタンパク質の総称

※3 第3回小動物飼育ミッション
https://iss.jaxa.jp/kiboexp/news/180511.html外部サイトへ

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科 医化学分野
東北メディカル・メガバンク機構長
教授 山本 雅之(やまもと まさゆき)
電話番号:022-717-8084
Eメール:masiyamamoto*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学大学院医学系研究科 医化学分野
講師 鈴木 隆史(すずき たかふみ)
電話番号:022-717-8088
Eメール:taka23*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道担当)
東北大学東北メディカル・メガバンク機構
長神 風二(ながみ ふうじ)
電話番号:022-717-7908
ファクス:022-717-7923
Eメール:pr*megabank.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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