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骨形成因子が脳室の繊毛形成を制御する 先天性水頭症の新規発症メカニズム理解への貢献が期待

【発表のポイント】

  • 骨形成因子(BMP)注1が脳室上衣細胞注2の繊毛注3形成を制御することを新規に見出した
  • BMPは培養した脳室上衣細胞において、繊毛の形成を顕著に阻害した
  • 繊毛の形成・機能障害は水頭症の原因となりうることから、先天性水頭症の新しい発症メカニズムの理解へ貢献が期待される

【概要】

脳の中には脳室と呼ばれる空間があり、脳脊髄液と呼ばれる液体が絶えず循環しています。脳脊髄液の循環は、脳室の中を裏打ちする脳室上衣細胞が持つ繊毛の波打ち運動によって作られています。繊毛の形成や機能に障害が生じると脳脊髄液の循環が滞り、水頭症などの障害の原因となり得ることが知られていました。東北大学大学院医工学研究科の稲田仁特任准教授らのグループは、骨形成因子として知られていたBMP2とBMP4タンパク質が、マウス新生仔脳から取り出して培養した上衣細胞において、繊毛の形成を顕著に阻害することを見出しました。これまで、BMPが脳室上衣細胞の繊毛形成に関与することは報告されておらず、本研究の結果は、先天性水頭症の新しい発症メカニズムの理解に資すると期待されます。

本研究成果は、2020年10月22日に国際科学誌Tohoku Journal of Experimental Medicine (電子版)に掲載されました。

【用語解説】

注1. 骨形成因子(BMP):骨や軟骨の形成を制御する因子として同定された一群のタンパク質。その後、骨形成の制御のみならず、神経系を含む組織や器官の発生、細胞死の誘導、細胞分化の制御など、様々な過程で重要な役割をしていることが報告されている。

注2. 脳室上衣細胞:脳や脊髄の中にある空間を裏打ちする一層の細胞。脳脊髄液と脳との間の障壁(バリアー)を形成し、物質のやり取りを制御している。また、脳室上衣細胞にある繊毛は、波打ち運動によって脳脊髄液の流れを作り出している。

注3. 繊毛:医学用語では線毛ともいう。細胞表面に生えた、絨毯の毛のような突起物。波打ち運動を行うことで、脳脊髄液の流れの形成のほか、気道における異物の排除、卵管における卵・胚の輸送などに役立っている。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医工学研究科
特任准教授 稲田 仁(いなだ ひとし)
電話番号:022-717-8203
Eメール:hinada*med.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

(取材に関すること)
東北大学大学院医工学研究科
電話番号:022-795-5826
Eメール:bme-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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