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緑内障治療薬開発のためのイメージングシステムの開発 カルパイン活性を生体内で検出するための新規蛍光プローブ

【発表のポイント】

  • 日本で失明原因疾患第1位の緑内障注1に対して、従来の眼圧下降治療法とは別の、新規治療薬の開発が求められている。
  • 網膜神経節細胞死を抑制するカルパイン注2に対する阻害薬が、新しい神経保護治療薬として有力である。
  • その開発の一環として、ヒトの網膜細胞におけるカルパイン活性を検出する蛍光プローブを用いた、生体内イメージングシステムを開発した。カルパイン阻害薬による神経保護治療のコンパニオン診断薬注3として実用化が期待される。

【概要】

緑内障は、網膜神経節細胞が障害されて視野が狭くなる病気で、日本では失明原因第1位の疾患です。東北大学大学院医学系研究科眼科学分野の中澤徹教授らのグループは、緑内障に対する新規治療薬の開発へ向けて、網膜の細胞死に関与するタンパク質であるカルパインの生体内イメージングシステムを開発しました。

本研究では、新規開発した蛍光プローブと臨床で使用されている眼底画像装置を用いて、生体の網膜細胞でカルパインの活性化を初めて明らかにしました。また、本イメージングシステムでは、神経保護治療薬として開発中のカルパイン阻害薬の治療効果の評価も可能で、コンパニオン診断薬として有用性を示した重要な報告です。

本研究成果は、緑内障を始めとする網膜神経保護治療薬の開発に大きく貢献することが期待されます。

本研究成果は、2020年9月16日Bioconjugate Chemistry誌に掲載されました。

図 1.Ac-LM-HMRGによるカルパイン活性化細胞の生体内イメージングとカルパイン阻害薬による治療効果の評価
A. ラットNMDA網膜障害(NMDA)群又は対照(PBS)投与群の蛍光陽性細胞の生体内イメージング。さらに、NMDA網膜障害前にカルパイン阻害薬SNJ-1945を投与したラットにおける蛍光陽性細胞の生体内イメージング。白い矢印が蛍光陽性細胞を示す。
B. 蛍光陽性細胞数を計測しグラフにしたものを示す。データは平均±SD(n=7)として示す。**P < 0.01 でNMDA投与群に対して有意差あり。

【用語解説】

注1. 緑内障:眼圧が上昇して視神経を圧迫し、視野欠損が出現・進行する疾患。ただし、日本の場合眼圧が正常範囲の正常眼圧緑内障が多い。

注2. カルパイン:活性化することによって細胞死を誘導するタンパク質分解酵素。カルパイン阻害薬の使用で細胞死が抑制される。カルパイン活性が上昇した網膜神経節細胞に対してカルパイン阻害薬を使用することで細胞死から保護できる。

注3. コンパニオン診断薬:特定の医薬品の有効性や安全性を高めるために、その使用対象患者に該当するかどうかなどをあらかじめ検査する目的で使用される診断薬。効果がより期待される患者の特定や用法・用量の最適化又は投与中止の判断を適切に実施するためなどに用いられる。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科眼科学分野
教授 中澤 徹(なかざわ とおる)
助教 浅野俊文(あさの としふみ)
電話番号:022-717-7294
FAX番号:022-717-7298
Eメール:ntoru*oph.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
Eメール:toasano*oph.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(取材に関すること)
東北大学病院広報室
電話番号:022-717-7149
FAX番号:022-717-8931
Eメール:press*pr.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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