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二酸化炭素の吸脱着による磁石のON-OFF制御に成功 "二酸化炭素磁気センサー"へ道筋

【発表のポイント】

  • 二酸化炭素ガスを吸着して磁石の性質を失い、二酸化炭素を排出すると磁石に戻る分子磁石*1の開発に成功
  • 二酸化炭素のような非磁性ガス*2により消磁される磁石は世界初。
  • 吸着した二酸化炭素が磁性を誘導する分子格子を変形させるとともに、分子格子と電子的に相互作用することで、材料が非磁性体の電子状態へと変化する機構。
  • 二酸化炭素を感知する磁気デバイスの創製につながる結果。

【概要】

磁石は身の回りでありふれた材料ですが、「分子の持つ柔軟性」を利用することで、従来の磁性体では実現不可能であった機能性の発現や、磁石機能の活用が可能です。

東北大学金属材料研究所の張俊 博士、高坂亘 助教、宮坂等 教授の研究グループは、大阪大学基礎工学研究科の北河康隆 准教授と共に、二酸化炭素ガスを吸脱着することで、磁化のON-OFFが可能な新たな多孔性磁石の開発に成功しました。

本現象は、吸着された二酸化炭素が、磁性を誘導する層状分子格子を変形させるとともに、分子格子と電子的な相互作用をすることにより、分子格子の電子状態を変化させ、磁気秩序*3を持たない状態(常磁性状態*4)になることで生じたものです。二酸化炭素のような、ありふれた非磁性・不活性ガスの吸着を利用して磁性体―非磁性体を制御した例はこれまでになく*5、ガス吸着による物性制御の可能性を大きく広げる結果です。

本研究成果は、2020年11月30日付け(現地時間)で英オンライン科学誌「Nature Chemistry」にオンライン掲載されました。

図1. 電子供与性分子(水車型ルテニウム錯体)と電子受容性分子(TCNQ誘導体)から合成される層状磁石の模式図。

【用語解説】

*1 日常で用いている磁石に代表されるように、多くの磁性体は合金や酸化物などの無機物で構成されています。これに対し、分子を用いて作成した磁性体を総称して分子磁性体(分子磁石)と呼んでいます。分子磁性体は無機物の磁石にはない「やわらかさ」や「設計性や機能性付加の多様性」を有しており、盛んに研究が進められています。

*2 不対電子を持たない物質。一般的なガス分子では、二酸化炭素は反磁性物質であり、酸素は常磁性物質*4です。

*3 物質中の電子スピン間に磁気的な相互作用が働き、それが三次元的に長距離に及ぶことにより磁石となります。一般的な磁石は通常、強磁性体、あるいはフェリ磁性体のどちらかです。磁石には磁気相転移温度が存在し、それより高い温度領域では常磁性体*4となります。

*4 不対電子(電子スピン)をもつ物質ですが、物質の電子スピンがバラバラの方向を向いているために非磁性体であるが、磁場を印加すると、その方向に弱く配列する性質を常磁性と言います。常磁性を示す物質を常磁性体といい、常磁性体は、強力な磁石を近づけるとそちらに引き寄せられます。しかし、磁場を取り除くとスピンはまたバラバラの方向を向いてしまうため、常磁性体は、いわゆる磁石としての性質は持ちません。

*5 一般的なガス分子では、酸素の吸脱着を利用した磁石のON-OFF(磁気相変換)が可能な材料が、これまでの研究において見出されていました。東北大学プレスリリース2019年1月16日

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

◆研究内容に関して
東北大学金属材料研究所 錯体物性化学研究部門 教授
宮坂 等(ミヤサカ ヒトシ)
TEL:022-215-2030
Email:miyasaka*imr.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

◆報道に関して
東北大学金属材料研究所 情報企画室広報班
TEL:022-215-2144 FAX:022-215-2482
Email:pro-adm*imr.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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