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神経-グリアの超回路相互作用の解明 脳内デュアルレイヤー情報処理の細胞生理学的基盤

【本学研究者情報】

〇本学代表者所属・職・氏名:大学院生命科学研究科超回路脳機能分野・教授・松井 広
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 脳内グリア細胞*1は、まわりの神経細胞から放出されるグルタミン酸*2に応答し、グルタミン酸を放出することが明らかになりました。このことから、グリア回路と神経回路は相互に作用しあう超回路となっていることが判明しました。
  • 私たちは、全く同じ経験をしても、記憶される時とされない時とがありますが、グリア細胞の機能を操作することで効果的な学習が成立する可能性があります。認知症などの治療にも役立つことが期待されます。

【概要】

脳内には、神経回路とグリア回路のデュアルレイヤーの情報処理回路が存在し、両者は緩やかに相互作用をする超回路を形成します。東北大学大学院医学系研究科の別府薫(日本学術振興会特別研究員)、東北大学大学院生命科学研究科(大学院医学系研究科兼任)の松井広教授らのグループは、グリア細胞には、まわりの神経細胞から放出されるグルタミン酸に応答し、興奮性の神経信号を増幅する機能があることを明らかにしました。グリア細胞は神経細胞から放出されたグルタミン酸を取り込む際に、細胞内に流入するイオンによって酸性化し、この酸性化によって、グリア細胞から逆にグルタミン酸が放出され、学習や記憶が成り立つ上で重要な代謝型グルタミン酸受容体を効率的に活性化することが分かりました。グリア由来グルタミン酸放出は、グリア細胞内のpHに依存するため、グリアの状態次第で、学習が成立するかどうかが左右される可能性が示されました。

本研究成果は、2021年2月2日付でJournal of Physiology誌にAccepted Articlesとして掲載されました。

【用語解説】

*1 グリア細胞:
脳内の細胞は、神経細胞とグリア細胞に分類されます。神経細胞は活動電位で情報を表現し、神経細胞同士をシナプス結合でつなぐネットワークで脳内情報処理が進むと考えられてきています。グリア細胞は、神経細胞の隙間を埋めて、神経細胞への栄養供給をする存在だと考えられてきましたが、近年、グリア細胞も特有の情報表現をしていて、神経細胞の担う情報処理に影響を与えることが認識されるようになってきました。

*2 グルタミン酸:
脳内の興奮性神経細胞の多くは、伝達物質としてグルタミン酸を使います。神経細胞から放出されたグルタミン酸は、シナプス結合した別の神経細胞を興奮させます。細胞外のグルタミン酸は、拡散して薄まり、最終的にはグリア細胞のグルタミン酸トランスポーターを介して、グリア細胞内に取り込まれて除去されます。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
担当:教授 松井 広(まつい こう)
電話番号:022-217-6209
Eメール:matsui*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当:高橋 さやか (たかはし さやか)
電話番号: 022-217-6193
Eメール: lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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