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熱電変換によるクリーンなエネルギーハーベスティングの実現に期待 溶融合成したZn4Sb3熱電変換材料のクラック生成・消滅機構を解明

【本学研究者情報】

〇本学代表者所属・職・氏名:大学院工学研究科 応用物理学専攻・准教授・林 慶
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 溶融合成した亜鉛アンチモン化合物(Zn4Sb3)において、第2相が存在するときにクラック※1が生じることを明らかにした。
  • 溶融後に長時間加熱することで第2相が消滅するとともに、Zn4Sb3のクラックもなくなり、高い熱電変換性能を得ることに成功した。
  • 本研究によって、溶融合成したZn4Sb3の有用性が示されたことから、それを用いたエネルギーハーベスティング※2の実現が期待される。

【概要】

低炭素社会の実現に向けて、熱エネルギーから発電できる熱電変換材料が注目されています。亜鉛アンチモン化合物(Zn4Sb3)は高い性能を示す熱電変換材料のひとつとして古くから研究されていますが、Zn4Sb3を溶融合成で作製するとクラックが生じるため、熱電変換性能を左右する電気伝導率が低くなることが長年の課題として残っていました。

東北大学大学院工学研究科 応用物理学専攻の吉岡 駿氏(博士前期課程学生)、林 慶准教授および宮﨑 讓教授らは、クラックが存在するZn4Sb3の溶融合成試料の微細組織観察を行い、第2相としてZnとZn3Sb2が存在し、クラックは Zn4Sb3とZnの界面で生じていることを明らかにしました。このことから、Zn4Sb3とZnの熱膨張率の違いがクラックの原因であることがわかりました。また、溶融後に加熱すると、Zn4Sb3の格子間サイトにZnがインターカレーション※3して、第2相が減少することを発見しました。さらに、適切な加熱時間においてクラックのないZn4Sb3を得ることに成功し、高い熱電変換性能を得ました。このクラック生成・消滅機構は、新しく提案した複合結晶構造※4モデルを用いて初めて明らかになったものです。

本研究成果は、Elsevierの発行する学術論文誌 Materials Today Energyに2021年3月23日に掲載されました。

【用語解説】

※1 クラック
物質の表面や内部に見られるひび割れ。

※2 エネルギーハーベスティング
身の周りのエネルギーから電力を得る発電技術の総称。

※3 インターカレーションとデインターカレーション
結晶構造の空隙に他の原子が出入りする反応で、入っていくことをインターカレーションといい、出ていくことをデインターカレーションという。

※4 複合結晶構造
複数の部分構造から成る結晶構造。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

<研究に関して>
林 慶(ハヤシ ケイ)
東北大学大学院工学研究科 応用物理学専攻 准教授
電話 022-795-4637
E-mail: hayashik*crystal.apph.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

宮﨑 讓(ミヤザキ ユズル)
東北大学大学院工学研究科 応用物理学専攻 教授
電話 022-795-7970
E-mail: miya*crystal.apph.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

<報道に関して>
東北大学工学研究科情報広報室 担当 沼澤みどり
電話 022-795-5898
E-mail: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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