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下水中の新型コロナウイルス濃度から感染者数を推定するための数理モデルを構築

【本学研究者情報】

〇大学院工学研究科 土木工学専攻 教授 佐野大輔
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 下水中の新型コロナウイルス濃度を用いて、下水集水域に存在する感染者数を推定するための数理モデルを構築しました。
  • 下水中の新型コロナウイルスの検出感度が従来法よりも100倍高い方法を用いれば、2020年の東京での感染流行第1波は4月11日、第2波は7月11日には検知可能であったとの結果が得られました。
  • 今後、COVID-19流行把握を目的とした下水疫学的手法の更なる適用拡大が期待されます。

【概要】

COVID-19が猛威を振るう中、下水中の新型コロナウイルス遺伝子を検出することで感染流行を早期検知する下水疫学に大きな期待が寄せられています。

東北大学大学院工学研究科・環境水質工学研究室の佐野大輔教授は、本学大学院環境科学研究科、医学系研究科及び北海道大学と共同で、下水中の新型コロナウイルス濃度から下水集水域の感染者数を推定するための数理モデルを構築しました。本数理モデルは、陽性診断者数から下水中の新型コロナウイルス排出量及び排出者数(感染者数)を推定するものであり、下水中の新型コロナウイルス濃度から排出者数(感染者数)を逆算することを可能にします。

本モデルの検証のため、実際に東京都(23区、八王子市及び町田市)における陽性診断者数の実績データを適用して下水中の新型コロナウイルス濃度を推定したところ、北海道大学と塩野義製薬が今年に入って発表した、検出感度が従来法と比べて100倍程度向上した手法を採用することにより、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の第1波は2020年4月11日、第2波は同7月11日に下水調査により検知可能であったとの推定結果が得られました。

本研究で構築した数理モデルを活用することで、下水中の新型コロナウイルス濃度から、症状が出ていない不顕性感染者を含む感染者総数の推定値を得ることが可能となります。

本研究は2021年6月10日付「Journal of Water Environment and Technology」((公社)日本水環境学会英文誌)で公開されました。

なお、本研究は日本医療研究開発機構(AMED)新興・再興感染症研究基盤創生事業(海外拠点研究領域)「フィリピン研究拠点における感染症国際共同研究」の支援を受けて行われたもので、本学のフィリピン研究拠点を活用し、同地で採取した下水から新型コロナウイルスやノロウイルス等を検出・解析することを通して、現地での感染症の流行状況や社会的因子との相関を分析する研究の一環として進められました。今回開発した数理モデルについては、今後、下水疫学的手法としてフィリピン国内での技術展開を予定しています。

図1.東京都における陽性診断者数の移動平均値(7日間)、及び本研究で構築した数理モデルを用いて計算した下水中新型コロナウイルス排出量と排出者数(感染者数)推定値。糞便中への排出は発症の2日前に始まると仮定した。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

<研究に関すること>
国立大学法人東北大学 大学院工学研究科 
土木工学専攻
教授 佐野 大輔
電話 022-795-7481
E-mail daisuke.sano.e1*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

<報道に関すること>
国立大学法人東北大学 大学院工学研究科 
情報広報室(担当:沼澤みどり)
電話 022-795-5898
E-mail eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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