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従来の10倍のプロトンを含むイオン伝導体の合成に成功 - 燃料電池や高効率水素製造への応用に期待 -

【本学研究者情報】

〇大学院工学研究科 教授 高村仁
東北大学研究者紹介

【発表のポイント】

  • 燃料電池や高効率水素製造に応用可能なプロトン伝導体(注1)の合成に成功
  • 従来必須であったドーピング(注2)を必要とせずに多量のプロトンを酸化物中に導入
  • 第一原理計算により、プロトンの特異な配位状態を解明
  • 450〜500 ℃の中温領域で10-2 S/cmの高いプロトン伝導度を達成

【概要】

 脱炭素社会実現に向けて水素の効率的な製造やその有効活用が注目されています。プロトン(H+)伝導体は燃料電池や水蒸気電解による水素製造に必須の材料ですが、従来、固体中に導入できるプロトン量には制約がありました。東北大学大学院工学研究科の博士課程後期3年川森弘晶(日本学術振興会特別研究員)、高村仁教授らの研究グループは、8万気圧の高圧下で従来の約10倍のプロトンを含有し、450〜500 ℃において10-2 S/cmの高いプロトン伝導性を示すBa-Sc系酸化物の合成に成功しました。多量のプロトンは金属イオンの欠損により導入されるため、従来のプロトン伝導体に必須であった異種金属のドーピングを必要としないメリットがあります。この成果は、プロトン伝導体のみならず全固体電池用のイオン伝導体等の材料設計にも新たな指針を与えます。

本成果は、2021年7月29日(木)(日本時間)に米国化学会の学術誌「Chemistry of Materials」に掲載されました。

図1 多量のプロトンがBa-Sc系酸化物中で占有可能な安定位置

【用語解説】

注1.プロトン伝導体: 固体中でプロトン(H+)が電荷を運ぶイオン伝導体。材料系として、高分子や酸化物があり、SOFCやSOECには耐熱性の高い酸化物系が用いられる。

注2.ドーピング: 酸化物などで電気伝導性や誘電性等の機能性を制御するために、その構成元素の一部を他の元素で置換すること。一般的には、金属元素を他の金属元素で置換するが、最近は酸素位置を窒素・水素等のイオンで置換する手法も 用いられている。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

<研究に関して>
東北大学大学院工学研究科
知能デバイス材料学専攻 教授 高村 仁
TEL: 022-795-3938
E-mail: takamura*material.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

<報道に関して>
東北大学工学研究科・工学部
情報広報室 沼澤みどり
TEL: 022-795-5898
E-mail: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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