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二次元膜粘性の分子論的起源を解明 創薬及び生体膜などの機能制御への応用の可能性

【本学研究者情報】

〇大学院理学研究科物理学専攻 准教授 齋藤真器名
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 二次元モデル生体膜の粘度を計測する新しい方法を開発
  • 中性子とX線の分光法により脂質分子の運動の緩和時間を同定
  • 分子運動の緩和時間と膜の粘度を関連づけることに成功
  • 膜粘性の起源が脂質分子自身の拡散に対する抵抗であることを実験的に証明し、膜構成分子の動きと膜の性質を関連づけることに成功
  • 将来的な創薬や膜機能制御への応用の可能性

【概要】

生体膜は、細胞のさまざまな機能を支える構造体だと考えられています。膜の内部では構成分子が移動し、反応場を形成する必要があるため、これらの機能にとって膜の「流動性」が重要です。この流動性を決定する主要因は、膜内を移動する物体が感じる摩擦、すなわち粘性ですが、膜の厚さはわずか数nm(10-9 m)ととても薄いため、その粘度を測定するのは実験的に難しく、報告されている値には測定技術ごとに数桁の差があります。

米国標準技術研究所及びメリーランド大学の長尾道弘教授を中心とし、東北大学大学院理学研究科の齋藤真器名准教授、京都大学の瀬戸誠教授を含む日米国際共同研究チームは、脂質分子の尾部(疎水性の炭化水素鎖)の運動を中性子とX線分光法で観察することにより、モデル生体膜の粘度を測定する新しい方法を開発しました。さらに本研究により、膜粘性の分子的起源は脂質分子が周辺の分子との相互作用によって受ける脂質分子間の摩擦であることが実証されました。脂質膜の粘性の起源を理解できたことで、将来的には創薬や生体膜機能の制御などに応用される可能性が考えられます。

本研究成果は、2021年8月12日にPhysical Review Lettersに掲載されました。

脂質膜の概念図。卵状で示した脂質の親水基は水と接触する一方、尾部は膜内に閉じ込められ水との接触が遮られます。今回の研究では脂質分子尾部の運動を中性子及びX線分光法で観測することにより膜の粘性についての知見が得られました。Copyright 2021 Michihiro Nagao

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

<研究に関すること>
大学院理学研究科物理学専攻
准教授 齋藤 真器名(さいとう まきな)
電話:022-795-7749
E-mail:makina.saito.d6*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

<報道に関すること>
大学院理学研究科広報・アウトリーチ支援室
電話:022-795-6708
E-mail:sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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