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厚さわずか2ナノメートルの半導体極薄トランジスタで分子認識に成功!― 医療・環境・生産に特化した分子センサーへの応用に期待 ―

【本学研究者情報】

〇多元物質科学研究所 講師 高岡 毅
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 現代の社会問題を解決するために超小型・薄型・軽量なセンサーが必要
  • 厚さわずか2ナノメートルの半導体を用いた分子認識手法を提案
  • 新たな半導体と光の組み合わせによる分子認識センサーの作成に成功
  • 医療用センシングや環境モニタリングへの応用が期待される

【概要】

気体や液体中に存在する分子種を特定する分子認識が、マイクロメートルサイズのセンサーに流れる電流を検出することによって簡便に行えるようになれば、喫緊の社会問題を解決する技術革新が可能となることが期待されます。

東北大学多元物質科学研究所の米田 忠弘 教授、高岡 毅 講師、国立研究開発法人 産業技術総合研究所 デバイス技術研究部門 安藤 淳 研究部門付らの共同研究グループは、厚さ僅か2ナノメートルで縦横1マイクロメートル程度の超小型半導体薄膜からなるセンサーを作成しました。センサー表面に、パイ(π)電子共役系分子注1)として興味が持たれている銅フタロシアニン(CuPc)分子注2)を吸着させ、さらに様々なエネルギーを持つ光を照射したときの光応答電流を観測する実験を行ったところ、特定のエネルギーを持つ光の場合にのみ光応答電流が観測されることを見出しました。この実験により、分子を吸着させたMoS2原子層薄膜に、分子特有のエネルギーを持つ光を照射すると、光応答電流が生じる、ということを世界で初めて示しました。

本技術を発展させることにより、体内化学物質のモニタリングによる疾患の早期発見、有害な揮発性有機分子や二酸化炭素などの高感度ガスセンシング、植物生育状態モニタリングなど、様々な社会問題を解決するための技術革新が可能になると期待されます。

本研究成果は、2021年8月3日に英国王立化学会の学術誌「RSC Advances」に掲載されました。

図. A)分子が、最高被占軌道(HOMO)と最低空軌道(LUMO)のエネルギー差に等しい光を吸収すると、HOMOには正電荷をもつ正孔が、LUMOには負電荷をもつ電子が生成される。B)MoS2電界効果トランジスタに銅フタロシアニン分子を吸着させ、1.76電子ボルトの光を照射すると、光応答電流が観測される。C)銅フタロシアニン(CuPc)分子が吸着する前と吸着した後の光応答電流。

【用語解説】

注1.パイ(π)電子共役系分子:非局在化したπ 電子を有する分子を指す。発光特性や、導電性・磁性などの興味深い性質を示し、各種の機能性材料に応用されている 。

注2.銅フタロシアニン(CuPc)分子:フタロシアニン骨格に銅イオンがキレートされた構造を持つ分子で、現在最も広く使われている青色顔料である。電子材料としても期待される。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
講師 高岡 毅(たかおか つよし)
電話:022-217-5369
E-mail:tsuyoshi.takaoka.b1*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所 広報情報室
電話:022-217-5198
E-mail:press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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