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冠動脈攣縮に対する世界初の超音波治療の開発 -リンパ管新生を介した抗炎症作用の関与-

【本学研究者情報】

〇大学院医学系研究科 客員教授 下川宏明
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 冠攣縮(かんれんしゅく)性狭心症注1における冠動脈外膜の炎症に対する治療法はこれまで開発されていなかった。
  • 冠攣縮の動物(ブタ)モデルを用いて、低出力パルス波超音波(LIPUS)注2治療の効果や作用機序を検討したところ、LIPUS治療がリンパ管新生を介した抗炎症効果をもたらし、冠攣縮反応を抑制することを明らかにした。
  • 本研究結果により、冠攣縮性狭心症における血管炎症抑制に対してLIPUS治療が有効である可能性が示唆された。

【概要】

冠攣縮性狭心症は、繰り返す胸痛発作や突然死の原因となることが知られています。東北大学大学院 医学系研究科 循環器内科学分野の下川 宏明(しもかわ ひろあき)客員教授らの研究グループは、冠攣縮のブタモデルを用いた検討により、低出力パルス波超音波(low-intensity pulsed ultrasound、LIPUS)が、冠動脈外膜のリンパ管新生を促進し、抗炎症効果を発揮することで治療効果をもたらすことを初めて明らかにしました。本研究によりLIPUS治療のさらなる臨床応用が期待されます。

本研究成果は、2021年9月13日午後2時(現地時間、日本時間9月14日午前4時)にPLOS ONE誌(電子版)にオンライン掲載されました。

図1.冠動脈造影写真
未治療群(A-C)では、冠攣縮を誘導する刺激(セロトニン)に対して、ステント留置部(黄色線)の両端において冠動脈過収縮反応が生じていた(青矢印)。一方、LIPUS治療群(D-F)では過収縮反応が抑制された(赤矢印)。また、このセロトニン誘発性冠攣縮は、Rho-kinase阻害薬でも抑制された(C)。

【用語解説】

注1. 冠攣縮性狭心症:心臓の筋肉に血液を送る血管(冠動脈)を取り囲む筋肉に痙れん(れん縮・スパズム)し、血管が一時的に狭くなるために、心臓の筋肉に血液が送られなくなり生じる病気。

注2. 低出力パルス波超音波:人間の可聴域を超える周波数(20kHz以上)を持った音波は超音波と呼ばれ、媒質を振動して伝導する縦波(疎密波)から構成される。パルス波は、連続的に音波を発信し続ける連続波とは対照的に、断続的に音波を発信する照射方法であり、生体内の機械的振動によって生じる熱の発生を抑えられるため、連続波よりも高い強度での照射が可能になる。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科
客員教授 下川 宏明(しもかわ ひろあき)
(現職:国際医療福祉大学 副大学院長)
電話番号:022-717-7152
Eメール:shimo*cardio.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
東北大学病院広報室
電話番号:022-717-8032
FAX番号:022-717-8931
Eメール:press*pr.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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