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炎症による骨吸収を抑える免疫環境を導くチタンナノ表面形態 ―毛羽立ち状ナノ突起によるマクロファージの機能制御―

【本学研究者情報】

〇大学院歯学研究科 教授 江草宏
研究室ウェブサイト

〇大学院歯学研究科 准教授 山田将博
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • チタン製の人工歯根を用いる歯科用インプラント治療では、細菌感染により、歯周炎と類似したインプラント周囲の炎症による骨吸収(インプラント周囲炎)が臨床的課題となっています。しかし、これまで体内の免疫機構を制御して、インプラント周囲炎を予防する技術はありませんでした。
  • 毛羽立ち状のナノ突起により、物理的刺激を加えることで、炎症による骨吸収の進行と抑制を司る重要な免疫細胞の一つであるマクロファージ*1の性質と機能を制御し、炎症性骨吸収を抑える免疫環境を導くチタンナノ表面形態の開発に成功しました。

【概要】

東北大学大学院歯学研究科 分子・再生歯科補綴学分野のKartikasari Nadia (かーてぃかさり なでぃあ)非常勤講師、山田将博(やまだまさひろ)准教授および江草 宏(えぐさ ひろし)教授らの研究グループは、マクロファージの分極と機能を制御し、破骨細胞分化抑制へと導く毛羽立ち状チタンナノ表面の開発に成功しました。

ある特定の配向性を示す毛羽立ち状ナノ突起を付与したチタン表面が、物理的刺激を加えることにより、マクロファージを細菌感染の拡大を抑える型へと分極させること、また、前破骨細胞の破骨細胞*2分化を抑制する生体分子の産生へと導くことを明らかにしました。

本研究成果は、歯科用インプラント表面にナノ形態を付与することにより、インプラント自体が自然免疫機構*3を調整する革新的な炎症性骨吸収の予防戦略の道筋を示しました。またこのナノテクノロジー技術の炎症性骨吸収抑制効果は、薬剤添加や細胞の遺伝子改変などを必要としないため、医療機器開発に向けた法令上のハードルが比較的低いことが予想されます。さらに、炎症性骨吸収を予防する他のバイオマテリアルの開発へとその応用が期待されます。本研究成果は、2021年10月19日Acta Biomaterialiaのオンライン版に掲載されました。

図1. 毛羽立ち状ナノ突起をもつチタンナノ表面によるマクロファージ機能制御の概要

【用語解説】

*1 マクロファージ:単球とよばれる白血球の一種を由来とする免疫細胞の一つ。体内に侵入した病原体などの異物を捕食・消化して排除するとともに、それら異物の抗原をリンパ球に提示し、抗体産生を担う獲得免疫へと繋げるなど、自然免疫における重要な役割を担う。

*2 破骨細胞:生体において骨を分解する唯一の細胞。骨の新陳代謝を担う重要な細胞であるが、その過剰な活性化は、骨粗鬆症や関節リュウマチ、歯周炎など様々な骨破壊性疾患の原因となる。単球/マクロファージ系前駆細胞である前破骨細胞が複数融合して形成される多核巨細胞である。骨表面に強固に接着し、タンパク分解酵素と酸を放出することで骨を分解する。

*3 自然免疫:獲得免疫に先立って、感染や発がんを防ぐために、病原体やがん細胞などの異物に対して、いち早く反応して排除する重要な初期免疫反応である。好中球やマクロファージなどの食細胞がその中心的役割を担う。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院歯学研究科
分子・再生歯科補綴学分野
准教授 山田 将博(やまだ まさひろ)
E-mail: masahiro.yamada.a2*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学大学院歯学研究科
分子・再生歯科補綴学分野
教授 江草 宏(えぐさ ひろし)
E-mail: egu*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院歯学研究科広報室
電話: 022-717-8260
E-mail: den-koho*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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