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磁化サイクルを繰り返しても歪まない磁気冷凍材料を開発 -安定に繰り返し使用可能な水素液化システム構築へ-

【本学研究者情報】

〇国際放射光イノベーション・スマート研究センター 
教授 中村哲也
准教授 SEPEHRI AMIN HOSSEIN
研究室ウェブサイト

【概要】

物質・材料研究機構(NIMS)は東北大学、高輝度光科学研究センター(JASRI)と共同で、水素の液化に必要な全温度範囲(77~20 K[ケルビン])に対応する新たな高効率磁気冷凍用材料として、Er(Ho)Co2系化合物を基本とした一連の合金を開発しました。これらの合金を組み合わせた磁気冷凍システムを用いることで、グリーン燃料社会実現のキーテクノロジーの1つである高効率な水素液化が可能となると期待されます。

水素は脱炭素社会の実現に向けて重要な役割を担っています。大量の水素の貯蔵や輸送には、気体状態よりも液体状態の方が、安全面も含め圧倒的に有利です。水素の普及のためには、液体水素の製造コストを大幅に下げる技術開発が求められています。磁気冷凍技術は、外部磁場に従って整列した原子磁石の向きが、磁場が消失してバラバラになる際に生じる磁気エントロピーの増加分を周囲(冷媒ガス)からの熱で補う吸熱現象を利用し、水素を間接的に冷却・液化する技術です。従来の気体冷凍技術に比べ大幅に省エネルギーになり、水素液化効率を約25% (気体冷凍)から50%以上に向上させることが原理的に可能で、装置のコンパクト化につながり、大きなコストを占めている大型のコンプレッサーを使用しないため、製造コストを大幅に下げる効果が期待されています。しかし、液体窒素温度から水素の液化に必要とされる広い動作温度範囲(77~20 K)をカバーすることができる、冷却能力が高くかつ磁場・温度の昇降に対しても材料劣化(内部応力の蓄積による破壊)が起こらない適当な材料がありませんでした。

本研究では、水素液化温度(20 K)から窒素液化温度(77 K)で、冷凍能力が非常に大きい磁性体であるEr(Ho)Co2系化合物に微量の3d遷移金属を添加することで、磁場印可・温度昇降の繰り返しに伴う構造変化による体積膨張を抑え材料を劣化させないことを発見しました。さらに添加元素の種類と量を調整するだけで、大きな冷凍能力を保持したままで水素液化に必要な全温度範囲(77~20 K)をカバーできる類似の組成・結晶構造をもった一連の材料群を開発しました(下図)。

本研究は、NIMSのXin Tang ICYSフェロー、H. Sepehri-Amin主幹研究員、東北大学の中村哲也教授、JASRIの小谷佳範主幹研究員らのグループによって行われました。また本研究は 、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 未来社会創造事業 大規模プロジェクト型「未来社会に必要な革新的水素液化技術」研究開発課題名 (磁気冷凍技術による革新的水素液化システムの開発、(研究開発代表者 : 西宮伸幸NIMS招聘研究員))の一環として行われました。本研究成果は、Nature Communications誌にて2022年4月1日(日本時間)にオンライン掲載されました。

図 水素の液化に必要な全温度範囲(77~20 K)において、大きな冷却効果を示す、Er(Ho)Co2系化合物を基本とした一連の材料を開発しました。

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問い合わせ先

国立大学法人 東北大学
国際放射光イノベーション・スマート研究センター
TEL:022-217-5204
FAX:022-217-5211
E-mail:sris*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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