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悪貨は良貨を駆逐する 転写因子GATA2変異が免疫細胞減少症を引き起こす

【本学研究者情報】

〇大学院医学系研究科分子血液学分野 教授 清水律子
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 遺伝性免疫不全疾患家系で見つかったGATA2遺伝子変異を導入したマウスを作製し、免疫細胞減少症を再現できた。
  • GATA2転写因子は単体で機能する場合と二量体注1を形成して機能する場合がある。
  • 二量体を形成して働く場合、異常GATA2による正常GATA2転写因子の機能阻害が疾患発症に関与していた。

【概要】

遺伝子の働きを制御するタンパク質である転写因子と病気との関連については、病気の早期発見や新しい治療法の開発、予防などへ繋がることから、急速に研究が進んでいます。東北大学大学院医学系研究科の清水律子教授らのグループ(分子血液学分野)は、白血球や赤血球などの血球産生を制御するために不可欠な転写因子GATA2の遺伝子変異とヒト免疫不全疾患との関連に注目し、遺伝性免疫不全疾患家系より見つかったGATA2遺伝子変異をマウスに導入し、ヒト疾患と同様の免疫細胞産生異常を引き起こす疾患モデルマウスの樹立に成功しました。さらに、GATA2転写因子が単量体としてDNAに結合して標的遺伝子の発現を制御する以外にも、二量体を形成して転写因子としての機能を発揮する場合があることを見いだしました。特に、GATA2変異体が正常GATA2と二量体を形成することで転写因子の機能を阻害し、本疾患の病態を引き起こしていることを見いだしました。この成果は、GATA2遺伝子変異が疾患を引き起こすことを実証する重要な知見であり、GATA2の機能異常が原因となる血液疾患の発症メカニズム解明、GATA2が制御する免疫細胞分化制御のメカニズムの解明につながることが期待されます。

本研究成果は 、2022年4月19日(現地時間、日本時間4月20日英国科学雑誌「Communications Biology」(オンライン版)に掲載されました。

図1. GATA2遺伝子変異による遺伝子発現制御異常に起因する造血障害
GATA2遺伝子変異導入マウスは加齢依存性の免疫細胞減少を呈することがわかった。変異GATA2による、GATA結合配列が直列に並んで存在している領域での正常GATA2の機能阻害が、病態形成に関与していることが示唆された。

【用語解説】

注1.二量体:2つの分子が会合して1つの機能単位となったもの。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科分子血液学分野
教授 清水 律子(しみず りつこ)
電話番号:022-717-3522
Eメール:rshimizu*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(取材に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
電話番号:022-717-8032
FAX番号:022-717-8187
Eメール:press*pr.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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