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染色体不安定性はがんの増殖を促進する 「異数性パラドックス」を解き明かす

【本学研究者情報】

〇加齢医学研究所分子腫瘍学研究分野 教授 田中耕三
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 染色体不安定性(細胞分裂の際に染色体分配異常が高頻度で起こる状態)は、通常の培養条件では細胞増殖に不利にはたらくが、腫瘍形成には有利にはたらくことがわかりました。
  • がんの増殖において、染色体不安定性は細胞ごとのゲノム構造の違いを生み出し、増殖に有利な細胞が選択される素地となっているのではないかと考えられます。

【概要】

多くのがん細胞で認められる染色体の数や構造の異常(異数性)の背景には、染色体不安定性(細胞分裂の際に染色体分配異常が高頻度で起こる状態)が存在していると考えられています。東北大学加齢医学研究所・分子腫瘍学研究分野の家村顕自助教、田中耕三教授らの研究グループは、東北大学大学院医学系研究科の中山啓子教授、東北大学大学院情報科学研究科の木下賢吾教授のグループとの共同研究により、染色体不安定性の存在は、通常の培養条件では細胞増殖に不利にはたらくにもかかわらず、腫瘍形成には有利にはたらくことを明らかにしました。異数性細胞は増殖速度の低下を示すにもかかわらず、多くのがんは異数性を示すという事実は「異数性パラドックス」注1として知られています。本研究結果が、これまで謎とされてきたこのパラドックスを説明する端緒ではないかと考えられます。

本研究成果は、6月5日に学術誌Cancer Science誌で発表されました。

図1 染色体不安定性のレベルによる細胞増殖の違い
染色体不安定性のレベルの高い細胞は、染色体不安定性のレベルの低い細胞と比べて通常の2次元培養での増殖は遅いが(左)、マウスに移植すると腫瘍を形成し(中央)、3次元培養では大きなスフィアを形成する(右)。

【用語解説】

注1 異数性パラドックス: 染色体数の異常によって細胞の生存に必要な遺伝子が失われたり、遺伝子発現のバランスが崩れたりすることにより、細胞の増殖が抑制される。さらにp53などの遺伝子が、異数性細胞が増殖するのを防いでいる。にもかかわらず、90%以上の固形がんが異数性を示す。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

東北大学加齢医学研究所 
教授 田中 耕三
電話 022-717-8491
E-mail kozo.tanaka.d2*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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