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iPS細胞を迅速かつ効率的に軟骨に誘導する技術を開発

【本学研究者情報】

〇大学院歯学研究科 教授 江草宏
病院 講師 新部邦透
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 人工多能性幹細胞(iPS細胞)※1から試験管内で従来よりも迅速かつ効率的に軟骨様組織を作ることに成功。
  • BMP-4※2遺伝子の発現を制御しながらiPS細胞を振盪浮遊培養することで、成熟度の高い軟骨様組織を迅速に作製できることを見出した。
  • この軟骨様組織をラットの膝関節軟骨欠損モデルに移植すると、腫瘍を形成することなく膝関節を再生したことから、その医療応用が期待される。

【概要】

人工多能性幹細胞(iPS細胞)※1から軟骨細胞へ誘導する方法は、これまでも数多く報告されています。しかし、多くの培養段階を要し、長期間の培養が必要という問題がありました。東北大学大学院歯学研究科 分子・再生歯科補綴学分野の新部邦透(にいべ くにみち)講師および江草 宏(えぐさ ひろし)教授らの研究グループは、遺伝子操作と振盪浮遊培養を組み合わせることで、マウスiPS細胞から成熟度の高い軟骨様組織を迅速に作製できることを見出しました。

本研究グループは、抗生物質を加えることで容易にBMP-4遺伝子の発現を制御できるマウスiPS細胞を作製し、この細胞を振盪しながら培養することで、約4週間で成熟した軟骨様の塊を得ました。この軟骨塊をラットの膝関節軟骨欠損部へ移植すると、腫瘍を形成することなく関節の軟骨と骨がほぼ元通りに再生されました。今後、この技術をヒトの軟骨再生技術に応用することで、培養期間の短縮による費用削減や、効率的な再生治療が得られる可能性があるだけでなく、創薬研究の発展に貢献することが期待されます。

本研究成果は、2022年7月28日にJournal of Tissue Engineering(Impact Factor: 7.940)のオンライン版に掲載されました。

図1:マウスiPS細胞にBMP-4遺伝子の発現制御と振盪浮遊培養を用いた迅速かつ効率的な軟骨誘導法。得られた軟骨様組織をラット膝関節の欠損部に移植すると優れた軟骨/骨再生能を示した。

【用語解説】

※1 人工多能性幹細胞(iPS細胞):幹細胞の一つ。体細胞にOct3/4,Sox2,Klf4等の特定の因子を導入することで得られる多能性幹細胞。胎生幹細胞(ES細胞)と同等の自己複製能、多分化能をもつ。受精卵から作製されるES細胞とは異なり倫理的な問題が少ないため、再生医療や創薬研究への応用が期待される。様々な組織になる万能細胞ではあるが、生体に移植した際に目的以外の組織にもなる可能性があるため、試験管内で効率よく完全に目的の組織に誘導する技術が求められている。

※2 BMP-4:Bone morphogenic protein t 4(骨形成タンパク質4)。Transforming growth factor-β(TGF-β)ファミリーに属するサイトカイン。主に骨、軟骨、歯の発生や形成に作用することが知られている。また、間葉系幹細胞が軟骨細胞へ分化する際に、細胞内シグナル伝達を調節する重要な因子として知られる。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院歯学研究科 
分子・再生歯科補綴学分野
講師 新部 邦透(にいべ くにみち)
E-mail: kunimichi.niibe.d4*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学大学院歯学研究科 
分子・再生歯科補綴学分野
教授 江草 宏(えぐさ ひろし)
E-mail: egu*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院歯学研究科広報室
電話: 022-717-8260
E-mail: den-koho*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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