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体性幹細胞の分化を迅速制御する新規機構の解明 貪食活性による幹細胞の分化制御

【本学研究者情報】

〇医学系研究科細胞組織学分野 教授 出澤真理
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 様々な疾患で治験が行われている多能性幹細胞であるMuse細胞が傷害臓器に遊走した後、どのようにして臓器を構成する適切な細胞に分化して組織修復するのか不明だった。
  • Muse細胞、神経幹細胞注1、間葉系幹細胞注2などの体性幹細胞は、傷害を受けた細胞を貪食注3し、そこから分化に必要な因子(転写因子等)を再利用することで目的の細胞へ短期間での分化が可能となる。
  • サイトカイン注4誘導や遺伝子導入を回避し、短期間でエラーなく目的の細胞への迅速分化によって幹細胞研究や再生医療への応用が可能となる。

【概要】

通常、幹細胞の分化誘導ではサイトカインなど細胞外からの刺激を段階的に処理し、数週間あるいは数か月をかけて目的の細胞へと誘導します。東北大学大学院医学系研究科の細胞組織学分野の若尾昌平講師と出澤真理教授らのグループは、Muse細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞などの体性幹細胞が貪食能を持ち、これらの幹細胞は傷害を受けて細胞死に陥った分化細胞を貪食し、もともと分化細胞で機能していた転写因子などの因子を直接利用することで、短期間でエラーなく貪食した細胞と同一の細胞種へと分化するという新たな機構が存在することを発見しました。この方法を活用することで、従来の煩雑でコストパフォーマンスの劣るサイトカイン刺激や遺伝子導入による誘導を回避し、目的とする細胞へエラー無く効率的に分化させることが可能となります。さらに目的とは異なる細胞の混入を防ぐことで品質の高い細胞製剤の作製が期待されます。

本研究成果は、日本時間2022年10月6日Cellular and Molecular Life Science誌のオンライン版で発表されました。本研究は、文部科学省科学研究費補助金と株式会社生命科学インスティテュートの共同研究費の支援により行われました。

【用語解説】

注1. 神経幹細胞 : 中枢神経系を構成する主要な細胞型であるニューロン、アストロサイトおよびオリゴデンドロサイトの供給源となる細胞である。

注2. 間葉系幹細胞:中胚葉性組織に由来する体性幹細胞。骨、脂肪、軟骨など中胚葉性細胞へ分化することができる。

注3. 貪食:免疫細胞などが、死んだ細胞の断片など体内の不要なものを取り込み、消化・分解すること。

注4. サイトカイン:細胞から分泌される様々な生理活性物質の総称。主に低分子のタンパク質である。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科細胞組織学分野
教授 出澤 真理(でざわ まり)
電話番号:022-717-8025
Eメール:mdezawa*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(取材に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
電話番号:022-717-7891
FAX番号:022-717-8187
Eメール:pr-office*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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