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グラフェン量子ドットデバイスの集積化合成技術を開発 ― 次世代高性能量子コンピュータの実現に期待 ―

【本学研究者情報】

〇大学院工学研究科電子工学専攻 准教授 加藤俊顕
研究者ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 2次元シート材料のグラフェン注1)をナノスケール化したグラフェンナノリボン注2)を用いた量子ドット注3)デバイスを集積化合成する技術を開発
  • 同デバイスにおいて、20K(-253℃)まで安定な励起準位注4)の観測に成功

【概要】

原子オーダーの薄さを持つグラフェンは優れた電気・機械・光学的特性を持つことから多くの次世代デバイスへの活用が期待されています。特に、2次元シートのグラフェンがナノスケール(0次元)化することで量子ドットと呼ばれる状態になり、次世代量子コンピュータ注5)を始め多くの応用展開が期待されています。しかし、現在のシリコンデバイスのようにグラフェン量子ドットを基板上に大規模集積化注6)する技術は確立されておらず、量子デバイス応用に向けて重要な課題とされていました。

東北大学大学院工学研究科電子工学専攻の加藤俊顕准教授らのグループは、同大学材料科学高等研究所、電気通信研究所、量子科学拠点(TQA:Tohoku Quantum Alliance)の大塚朋廣准教授のグループと共同で、グラフェンの1次元材料であるグラフェンナノリボンを活用した新しいグラフェン量子ドットデバイスを開発しました。本手法で同一基板内に複数のデバイスを形成した結果、量子ドット特性の基本であるクーロンダイヤモンド注7)を半数以上の56%のデバイスで観測することに成功し、将来の大規模集積化の可能性を実証しました。さらに、量子コンピュータ応用等に向けても重要となる励起準位(ダイヤモンドの淵に現れる平行線)が、20 K(-273℃)まで安定に存在可能であることを明らかにしました。本技術を活用することで、将来の量子コンピュータの高性能化や高温動作への貢献が期待できます。

本研究成果は、2022年12月22日(現地時間)にネイチャーパブリッシンググループの英国科学雑誌Communications Materials(電子版)に掲載されました。

本研究で開発したグラフェン量子ドットデバイスの構造写真と典型的なクーロンダイヤモンド特性。

【用語解説】

注1)グラフェン
六員環構造に炭素原子が連なった二次元シート材料。1原子厚みの究極の薄さを持つ原子層材料。極めて高い電気伝導特性を示す。バンドギャップを持たないため金属的振る舞いを示す。

注2)グラフェンナノリボン
2次元シートのグラフェンをナノメートル幅のリボン構造(疑似1次元化)にしたもの。金属的伝導を示すグラフェンに対し、特定の原子配列を持つグラフェンナノリボンの幅が狭くなることで、バンドギャップが発現し半導体化することが知られている。

注3)量子ドット
半導体材料が疑似的に0次元構造をとることで発現する量子構造。内部の量子状態を活用した量子ビットや発光素子として応用が期待されている。

注4)励起準位
量子ドットのクーロンダイヤモンド特性において、ダイヤモンド端の外側に平行に現れるエネルギー準位の一種。スピン型の量子コンピュータでは、外部磁場等を印加した際に現れる基底状態のスピン分裂を活用して量子演算を行うため、基底準位と励起準位の間に十分なエネルギー差が存在することが必要となる。

注5)量子コンピュータ
量子状態の重ね合わせを利用した新しい原理で動作するコンピュータ。従来コンピュータに比べ圧倒的な演算速度を持つことが実証されている。

注6)大規模集積化
電子デバイスを同一基板上に高密度かつ大面積に配置する技術。現在のコンピュータや量子コンピュータはコンピュータ内部に搭載する単独の素子の数に比例してコンピュータ全体の性能が決定しているため、できるだけ高密度かつ大規模に単独素子を並べる同技術の開発が実用の観点で極めて重要である。

注7)クーロンダイヤモンド
量子ドットの両端にかける電圧と外部から印加するゲート電圧を掃引した際に、量子ドットを流れる電流の微分コンダクタンスがゼロとなる領域がダイヤモンド形状として現れる特性。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科 
准教授 加藤 俊顕(カトウ トシアキ)
電話 022-795-7046 
E-mail kato12*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学 材料科学高等研究所(WPI-AIMR)
東北大学 電気通信研究所
東北大学 量子科学拠点(TQA:Tohoku Quantum Alliance)
准教授 大塚 朋廣(オオツカ トモヒロ)
電話 022-217-5509
E-mail tomohiro.otsuka*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道担当)
東北大学大学院工学研究科 情報広報室 担当 沼澤 みどり
電話 022-795-5898
E-mail eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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