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有力な熱電材料マグネシウムスズ化合物のp型性能で記録更新 格子欠陥の制御により高性能のn型とp型の単結晶がそろい実用的な発電デバイス実現に期待

【本学研究者情報】

〇大学院工学研究科応用物理学専攻 准教授 林慶
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 様々な大きさの格子欠陥※1によりマグネシウムスズ化合物単結晶※2をp型化
  • p型マグネシウムスズ化合物単結晶の熱伝導率は多結晶より低く、熱電性能が向上
  • n型とp型のマグネシウムスズ化合物単結晶を使う発電デバイスの性能向上に貢献

【概要】

熱電材料は排熱から発電できることから、低炭素社会を実現するための有望な材料として注目されています。なかでもマグネシウムスズ化合物は、自動車や工場から排出される500 K~700 Kの中高温排熱から発電できる熱電材料として実用化が期待されています。これまでの研究で、多結晶より熱電性能が高い、電気を電子が運ぶn型のマグネシウムスズ化合物の単結晶作製に成功していました[1]。しかし、電子が抜けた穴(ホール)が電気を運ぶp型のマグネシウムスズ化合物の熱電性能が低いことが課題として残されていました。

東北大学大学院工学研究科応用物理学専攻の黄志成氏(博士後期課程)と林慶准教授は、清華大学(中国)の李敬锋教授の研究グループと共同研究を行い、様々な大きさの格子欠陥を導入することでp型でも多結晶より熱電性能が高いマグネシウムスズ化合物の単結晶作製に成功しました。これにより、マグネシウムスズ化合物単結晶を用いたエネルギーハーベスティング※3の実現が期待されます。

本研究成果は、英国王立化学会発行の科学誌Journal of Materials Chemistry Aに2023年1月12日20:00に掲載されました。

[1]東北大学プレスリリース,2020年12月24日

当研究で作製したマグネシウムスズ化合物単結晶の透過型電子顕微鏡像

【用語解説】

※1 格子欠陥、転移、アンチサイト欠陥
作製試料に含まれる点欠陥や線欠陥といった欠陥のこと。点欠陥として、原子の周期的な配列の隙間に原子が侵入する格子間欠陥、原子が欠損する空孔欠陥、構成原子同士が相互置換するアンチサイト欠陥がある。置換元素も点欠陥の一種である。線欠陥として、特定の原子面の上方と下方で原子面の数が異なって余剰原子面が生じる転位(刃状転位)がある。

※2 マグネシウムスズ化合物単結晶
マグネシウムとスズがモル比2:1で化合した物質のことを指す。

※3 エネルギーハーベスティング
身の周りの未利用エネルギーから電力を得る発電技術の総称。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科 応用物理学専攻 准教授 林 慶(ハヤシ ケイ)
電話 022-795-4637
E-mail kei.hayashi.b5*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

同 教授 宮﨑 讓(ミヤザキ ユズル)
電話 022-795-7970 
E-mail: yuzuru.miyazaki.b7*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科 情報広報室 担当 沼澤 みどり
電話 022-795-5898
E-mail eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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