本文へ
ここから本文です

少数民族の言語の脳内処理過程を解明!-理解しやすい語順と話しやすい語順が同じとは限らないことを実証-

【本学研究者情報】

〇文学研究科 教授 小泉政利
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 消滅の危機に瀕している少数民族の言語、カクチケル語注1の脳内処理過程を脳機能計測によって研究
  • 話しやすい語順を決める主な要因は思考の順序、理解しやすい語順を決める主な要因は文法処理の複雑さであり、両者は異なることを世界で初めて実証

【概要】

言葉を話すときには、語順を決める必要があります。複数の語順を許す言語においては、目的語が主語に先行する語順(OS語順)よりも主語が目的語に先行する語順(SO語順)の方が母語話者に好まれる傾向があることが知られています。しかし、語順の決定と人間の思考の順序との関連は不明でした。

東北大学大学院文学研究科言語学研究室の小泉政利(コイズミ マサトシ)教授、 木山幸子(キヤマ サチコ)准教授の研究グループは、OS語順を基本とする言語カクチケル語の母語話者が、カクチケル語を話したり聞いたりする際の脳内処理過程を計測し、言語学、心理学、脳科学の観点から研究してきました。

その結果、文を話す時に選ばれる語順を決定する主な要因は思考の順序であることを世界で初めて実証しました。また、文を理解する際の処理負荷を決定する主な要因は文法処理の複雑さであり、語順を決定する要因とは別であることを明らかにしました。

カクチケル語は中米グアテマラの中部で話されるマヤ諸語の1つであり、ユネスコによって消滅危機言語に指定されています。本研究は、言語や人間性に対する理解を深めるとともに、危機言語に対する関心を高めることによって言語と文化の多様性を維持促進することの重要性の認識を広め、SDGsの目標10に掲げられる、不平等をなくすことに貢献することが期待されます。

本研究の一連の成果が書籍として英国のケンブリッジ大学出版局より2023年1月31日に出版されました。

図3 fMRI実験の結果:
カクチケル語において、VOS語順の文に比べてSVO語順の文を聞いて理解している時の方が文法処理を司る脳の一部(左下前頭回)の神経活動が増大しました。VOSよりもSVOの方が処理負荷が高いことを示しています。

【用語解説】

注1.カクチケル語(Kaqchikel)
主にグアテマラで話されるマヤ諸語の一つ。ユネスコ(UNESCO)によって、消滅危機言語(endangered languages)に指定されている。「切る スイカ 萩子」のように日本語(「萩子がスイカを切る」)と全く逆の語順をもつ。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院文学研究科
言語学研究室
教授 小泉政利(コイズミ マサトシ)
電話 022-795-5983
E-mail koizumi*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

准教授 木山幸子(キヤマ サチコ)
E-mail skiyama*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学文学部・文学研究科
総務企画係
電話 022-795-6002/6003
E-mail art-syom*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

sdgs_logo

sdgs10

東北大学は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています

このページの先頭へ