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小惑星リュウグウの石から太陽系最初期にできた可能性のある物質を発見 ─原始太陽系星雲内側で形成し、太陽から遠いリュウグウ母天体まで運ばれたか─

【本学研究者情報】

〇大学院理学研究科地学専攻 講師 中嶋大輔
大学院理学研究科地学専攻 教授 中村智樹
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 小惑星リュウグウ(注1の石の中から原始太陽系星雲(注21000℃以上の高温環境でできた固体粒子であり、CaAlに富む包有物(注3(以下、CAI)とコンドリュール(注4に類似した物質(コンドリュール様物質)を発見。詳細な化学組成分析と酸素同位体比(注5分析を行った。
  • リュウグウ試料中のコンドリュール様物質は先行研究で予言されていた初生コンドリュールと鉱物学的、化学的に類似していた。
  • リュウグウ試料中のCAIは太陽系形成最初期に形成した可能性がある。
  • リュウグウ試料におけるコンドリュール様物質、CAI、それらの破片は、原始太陽系星雲内側領域で形成した後に太陽から遠く離れたリュウグウ母天体(注6集積領域まで運ばれたと推定。

【概要】
 小惑星探査機「はやぶさ2」が地球に持ち帰った近地球軌道小惑星リュウグウの試料にコンドリュール様物質とCAIが含まれていることが「初期分析チーム」の一つである「石の物質分析チーム」の研究(*)から明らかになっています。本研究はコンドリュール様物質とCAIの詳細な化学組成分析と酸素同位体比分析を行いました。

 コンドリュール様物質はカンラン石に富む初生コンドリュールと考えられている物質と鉱物学的に類似しており、太陽近傍で形成したものと現在の小惑星帯領域で形成したものに分けられることが分かりました。CAIは、太陽系最古のCAIと同じくらい古く、太陽近傍で形成したと考えられます。コンドリュール様物質とCAIは共に直径30µm以下と小さいことから、原始太陽系星雲内側領域で形成したこれらの固体粒子のなかでも特に小さいものが選択的に太陽から遠く離れたリュウグウ母天体集積領域まで運ばれたと考えられます。コンドリュール様物質やCAIのような固体粒子がどのようにして太陽系遠方まで運ばれたのか、未だ明確な答えは出ていません。これを明らかにすべく、リュウグウ試料中のコンドリュール様物質とCAIの分析を更に進めます。

 本研究成果は、英国ネイチャー・パブリッシング・グループ(NPG)発刊の国際学術雑誌 Nature Communicationsに、2023216日(木)19時(日本時間)のオンライン版で公開されました。また、本成果は同誌の天文学・惑星科学分野でのfeatured articleに選出されました。

 (*https://www.sci.tohoku.ac.jp/news/20220926-12281.html

図1:(a) 炭素質コンドライト隕石薄片の光学顕微鏡写真。破線の領域の拡大写真を(b)に示す。楕円形を示す明るい物質(破片になったものも含む)がコンドリュール(Chondrule)、実線で囲った不規則形の物質がCAI、暗い領域が細粒の物質からなるマトリックス。

【用語解説】

(注1)小惑星リュウグウ:
小惑星は、主に火星と木星の間で太陽の周りを公転する天体のうち、惑星と準惑星およびそれらの衛星を除く小天体で、約50万個あると推定されている。リュウグウは「C(炭素質)型小惑星」というグループの分類される小惑星の1つで、小惑星探査機「はやぶさ2」が202012月にここの試料を持ち帰った。

(注2)原始太陽系星雲:
45億6700万年前に誕生した直後の太陽系に存在していたと考えられる太陽を取り巻くガス円盤。現在の太陽系には存在せず、太陽系形成期の早い段階で消失したと考えられている。

(注3)CaとAlに富む包有物(CAI):
太陽系で最古の難揮発性鉱物からなる固体粒子。太陽系形成期に太陽近くの高温のガスから凝縮してできたと考えられている。

(注4)コンドリュール:
小惑星起源の隕石に多く含まれている球状、またはそれに近い形態の粒子である。原始太陽系星雲内部で1000℃以上の加熱の後、急速に冷却されたことによってできたと考えられている。カンラン石と金属鉄からなる物質を出発物質とし、細粒な塵が付着して加熱・溶融を繰り返すことで作られたという説がある。

(注5)酸素同位体比:
安定同位体16O17O18Oの個数比。16Oを分母に取った比の地球海水の値からのずれを千分率で表したものをδ値と呼ぶ。隕石種とその構成物質ごとに異なる値を取るため、未知の地球外試料の起源を同定することに用いられる。

(注6)リュウグウ母天体:
誕生時のリュウグウ。直径はおよそ100km程度であったと考えられる。この母天体が破壊されて現在のリュウグウになった。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院理学研究科地学専攻
講師 中嶋 大輔(なかしま だいすけ)
電話:022-795-5903
E-mail: dnaka*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学大学院理学研究科地学専攻
教授 中村 智樹(なかむら ともき)
電話:022-795-6651
E-mail: tomoki.nakamura.a8*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院理学研究科
広報・アウトリーチ支援室
電話: 022-795-6708
E-mail:sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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