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iPS細胞による心筋細胞作製を効率化する培養法を確立 〜培養細胞を挟み込む硬さが決め手〜

【本学研究者情報】

〇大学院歯学研究科 教授 江草宏
大学院歯学研究科 講師 新部邦透
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • iPS細胞注1をゲルで挟んで培養することで、細胞周囲の硬さ環境を調節できるサンドウィッチ培養法を確立しました。
  • iPS細胞周囲を心臓の硬さに近似させると、心臓の筋肉の細胞に分化注2しやすくなり、成熟した心筋細胞が効率的に得られることを示しました。
  • 本研究成果は、iPS細胞を用いた心臓の再生医療や培養臓器の作製に貢献することが期待されます。

【概要】

近年、細胞周囲の硬さが細胞の性質に影響を及ぼすことが分かってきました。しかしiPS細胞が周囲の硬さに対してどのような応答をするかはよく分かっていませんでした。

東北大学大学院歯学研究科 分子・再生歯科補綴学分野の大学院生Praphawi Nattasit(パパウィー ナッタシット)さん、新部邦透(にいべ くにみち)講師、江草 宏(えぐさ ひろし)教授および同大大学院工学研究科 山本雅哉(やまもと まさや)教授らの研究グループは、iPS細胞が形成した細胞の塊を、硬さの調節が可能なハイドロゲルで挟みこむ"サンドウィッチ培養法"を確立しました。本培養法を用い、ゲルの硬さを心臓の硬さに近似させると、iPS細胞が中胚葉注3の細胞に分化しやすくなり、拍動する心筋細胞が効率的に得られました。

本研究で確立した培養法は、従来のiPS細胞を用いた心筋細胞作製の効率化に役立つ可能性があります。また、硬さ環境に着目した本培養法は、iPS細胞から様々な組織や器官(培養臓器)を作製するために適した硬さ環境や、その分子機構を明らかにするツールとして活用されることが期待されます。

本研究成果は、2023年3月5日に、高分子科学の専門誌Macromolecular Bioscienceに掲載されました。

図1:iPS細胞周囲の硬さ調節が可能なサンドウィッチ培養法を用いた心筋細胞への誘導

【用語解説】

注1. iPS細胞:特定の因子を細胞に導入することで人為的に作られた人工多能性幹細胞。あらゆる細胞から作り出すことが可能であり、倫理的な課題が残されていた胎性幹細胞(ES細胞)に代わる再生医療の細胞源として着目されており、高い増殖能と分化能を有する。再生医療の他、遺伝子疾患等の疾患特異的な細胞モデルを確立することで、薬剤スクリーニングなど医療分野への幅広い応用が期待されている。

注2. 分化:幹細胞が何かしらの役割を担う別の細胞に段階を経ながら分裂・増殖して変化すること。最終的な役割の決まっていないiPS細胞は、「未分化」な状態と呼ぶ。筋肉の細胞や皮膚の細胞など、組織や器官を構成し役割の決まった細胞は分化が終了しており、それぞれの場所で機能を果たす。

注3. 中胚葉:発生が進む段階で、主に骨・軟骨・脂肪・骨格筋などに分化する体節中胚葉、心臓・血管・内臓筋などに分化する側板中胚葉など体を構成する重要な胚葉。表皮や神経系に分化する外胚葉、消化管に分化する内胚葉と合わせて、動物の発生の初期段階で区別される三胚葉のうちの1つ。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院歯学研究科 
分子・再生歯科補綴学分野
講師 新部 邦透(にいべ くにみち)
電話: 022-717-8363
E-mail: kunimichi.niibe.d4*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学大学院歯学研究科 
分子・再生歯科補綴学分野
教授 江草 宏(えぐさ ひろし)
電話: 022-717-8363
E-mail: egu*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院歯学研究科広報室
電話: 022-717-8260
E-mail: den-koho*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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