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XFELと電子顕微鏡による低分子有機化合物の結晶構造解析 -2線源の特性を生かし、水素原子と電荷に関する情報を取得-

【本学研究者情報】

〇多元物質科学研究所 教授 米倉功治
研究室ウェブサイト

【概要】

理化学研究所(理研)放射光科学研究センター利用技術開拓研究部門生体機構研究グループの高場圭章基礎科学特別研究員、利用システム開発研究部門SACLAビームライン基盤グループイメージング開発チームの眞木さおり研究員、生体機構研究グループの米倉功治グループディレクター(理研科技ハブ産連本部バトンゾーン研究推進プログラム理研-JEOL連携センター次世代電子顕微鏡開発連携ユニットユニットリーダー、東北大学多元物質科学研究所教授)、SACLAビームライン基盤グループビームライン開発チームの井上伊知郎研究員、高輝度光科学研究センターXFEL利用研究推進室の登野健介チームリーダー、理研同センター物理・化学系ビームライン基盤グループの矢橋牧名グループディレクター、同センターの石川哲也センター長らの共同研究グループは、X線自由電子レーザー(XFEL)[1]を用いて、低分子有機化合物の微小結晶から水素原子を含む詳しい構造解析が可能なことを明らかにし、XFELと電子顕微鏡の相補利用の有用性を示しました。

本研究成果は、有機化合物の立体構造、化学的性質、機能のより詳しい理解を進め、創薬や材料開発に役立つと期待できます。

有機合成化学、薬学、材料科学などの分野では大きな結晶が得られない化合物が多いため、小さな結晶の構造解析が重要です。電子線はX線に比べて試料に数万倍も強く散乱されるため、微小結晶の構造解析に利用されています。

今回、共同研究グループはXFEL施設「SACLA」[2]を用いた高効率な解析技術を開発し、ローダミン6Gという有機蛍光分子の詳細な構造を決定することに成功しました。この構造と電子顕微鏡を用いて得られた構造を比較したところ、化学結合の種類によって変わる水素原子の結合距離を判別し、X線と電子線の両線源で異なる散乱体を識別する精度を持つことが分かりました。また、原子座標[3]の信頼性はXFELの方が高く、一方で電子線は電荷に対して高い感度を持つことも明らかになりました。これにより、分子機能と直結する構造特性を観察できることが示されました。

本研究は、科学雑誌『Nature Chemistry』オンライン版(3月20日付:日本時間3月21日)に掲載されました。

XFEL(黄色線)と電子線(緑線)による微小結晶(輝点)構造解析のイメージ

【用語解説】

[1] X線自由電子レーザー(XFEL)
近年の加速器技術の発展によって実現したX線領域のパルスレーザー。従来の半導体や気体を発振媒体とするレーザーとは異なり、真空中を高速で移動する電子ビームを媒体とするため、原理的な波長の制限はない。「SPring-8」などの従来の放射光源と比較して、10億倍もの高輝度のX線がフェムト秒(1,000兆分の1秒)の時間幅を持つパルス光として出射される。この高い輝度を生かして、ナノメートルサイズの小さな結晶を用いたタンパク質の原子レベルでの分解能の構造解析や、X線領域の非線形光学現象の解明などの用途に用いられている。XFELはX-ray Free Electron Laserの略。

[2] XFEL施設「SACLA」
理研と高輝度光科学研究センターが共同で建設した、日本で初めてのXFEL施設。科学技術基本計画における五つの国家基幹技術の一つとして位置付けられ、2006年度から5年間の計画で建設・整備を進めた。2011年3月に施設が完成し、SPring-8 Angstrom Compact free electron LAserの頭文字を取ってSACLAと命名された。2011年6月に最初のX線レーザーを発振、2012年3月から共用運転が開始され、利用実験が始まった。大きさが諸外国の同様の施設と比べて数分の1と、コンパクトであるにもかかわらず、0.1ナノメートル以下という世界最短波長クラスのレーザーの生成能力を持つ。

[3] 原子座標
分子中の原子の空間的な配置のこと。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
教授 米倉 功治(よねくら こうじ)
TEL: 022-217-5380
E-mail: koji.yonekura.a5*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所 
広報情報室
TEL: 022-217-5198
E-mail:press.tagen*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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